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霰粒腫の治療

霰粒腫は非感染性の慢性炎症で、マイボーム腺の導管の閉塞で貯留した変性油脂に対する異物肉芽腫が本態です。https://meisha.info/archives/627
霰粒腫の大きさや重症度によって以下の治療法を選択します。
1. 温罨法、経過観察
2. ステロイド眼軟膏、局所注射
3. 手術:切開と掻爬
江口秀一郎: 麦粒腫・霰粒腫  眼科 55: 549-554, 2013.
Ben Simon GJ et al: Intralesional triamcinolone acetonide injection versus incision and curettage for primary chalazia: a prospective, randomized study. Am J Ophthalmol 151: 714-718 e711, 2011.

温罨法warm compress

組織を温めることは炎症を増悪させるリスクも心配されますが、マイボーム腺から分泌される油脂を固まりにくくすることで霰粒腫の予防に働きます。
霰粒腫の患者さんではマイボーム腺からの脂質の溶解温度が上昇しているとされています。
江口秀一郎: 麦粒腫・霰粒腫 眼科 54: 1456-1460, 2012.

ステロイド眼軟膏

眼瞼結膜側から透けて見えるような霰粒腫は別として、点眼のステロイドではなく、1日2回程度のプレドニン眼軟膏の皮膚への塗布の治療効果が期待できます。
特に眼瞼前葉に炎症が波及して発赤を伴いやすい小児のびまん型霰粒腫に対しては、手術の前に試してよいと考えられます。
渡辺芽里 他: 小児の霰粒腫に対するステロイド眼軟膏による治療. 眼科 57: 1451-1456, 2015.

ステロイドの局所注射

ベータメサゾンやデキサメサゾンの水性懸濁液、0.1-0.2mlを霰粒腫自体に直接(intralesional)あるいはその周囲に、経皮的あるいは眼瞼結膜側から注射する方法が1980年代に本邦でも多く報告されました。
寺西千尋: 霰粒腫に対するステロイド剤局所注射療法. 日本眼科紀要 34: 2123-2127, 1983.
最近はトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト)が使用されることが多いようです。

手術

手術は霰粒腫摘出術と呼ばれ、具体的には原因となった油を掻き出す切開/掻爬incision & curettage (I&C)です。
局所麻酔挟瞼器を使用して、皮膚側または裏の眼瞼結膜を切開して行います。https://meisha.info/archives/218
霰粒腫の病態である脂肪肉芽腫の原因を除去する根本治療です。