黄斑部毛細血管の拡張を特徴とする疾患群に対して、1993年Gassらは特発性傍中心窩網膜毛細血管拡張症Idiopathic Juxtafoveolar Retinal Telangiectasis: IJRTと命名しました。
これは3グループ6群(Gass‒Blodi分類)の分類で理解しにくいものでした。
その後この分類に基づく症例を集めて検討したYanuzziらは2006年、特発性黄斑部毛細血管拡張症Idiopathic Macular Telangiectasia: IMTと改名して3タイプに再編したが、極めてまれなtype 3を除くMacTel type 1 (https://meisha.info/archives/5810)とMacTel type 2が実臨床で注目されています。
飯田知弘他: 黄斑部毛細血管拡張症2型診療ガイドライン(第1版). 日本眼科学会雑誌 126:463-71.2022
MacTel type 2の診断に有用なOCT所見として[網膜の肥厚を伴わない空洞所見]があります。
黄斑浮腫とは異なりフルオレセイン蛍光眼底造影 FAでの蛍光漏出部位とは一致しないこの所見は、液貯留による嚢胞ではなく、網膜組織が委縮で失われたまさに空洞と考えられます。
病名に含まれる[毛細血管拡張]も実は原因ではなく、網膜組織の委縮による二次的な変化だと考えられています。
古泉英貴: 黄斑部毛細血管拡張症 2 型. 臨床眼科 77:64-70.2023
矯正視力は1.0/0.4で左眼の変視症を訴えて受診しました。
図上段の左眼のOCTでは断裂するEllipsoid Zone: EZにその上の空洞下壁の網膜組織が引き込まれる様子が観察できます。
図下段左の眼底自発蛍光では空洞部に一致して蛍光の減弱がみられます。
図下段右のOCT angiography: OCTA(下段左の黄色四角に相当)では軽度の毛細血管拡張がみられます。
7年後のOCTでは右眼にも網膜内空洞がみられ、視力は0.7/0.15と両眼とも低下しました。