視神経の原発性腫瘍の2/3は視神経膠腫optic nerve gliomaで、残りの1/3は視神経鞘髄膜腫ONSM: optic nerve sheath meningiomaです。
前者の多くは小児に、後者の多くは30-50台の中年女性にみられます。
Dutton JJ et al. Diagnostic atlas of orbital diseases: 120-123, W.B. Saunders. 2000
視神経鞘髄膜腫ONSMの臨床症状は緩徐進行性の視力視野障害です。
ONSMに特徴的な所見として乳頭毛様短絡血管 optociliary shunt vesselsがあります。
これは患眼の視神経乳頭上にみられる異常血管です。
ONSMでは網膜中心静脈が圧迫されて、網膜中心動脈系に慢性的な還流障害が生じます。
その結果、脈絡膜の短後毛様動脈系との間で形成される、視神経乳頭上のシャント血管が乳頭毛様短絡血管です。
ONSMで見られる特徴的な3所見、すなわち進行性の視力障害、視神経乳頭蒼白、乳頭毛様短絡血管はHoyt-Spencer徴候と呼ばれます。
乳頭毛様短絡血管はONSM以外では網膜中心静脈閉塞症CRVOでもみられます。
ONSMの多くは視神経を取り巻く管状 diffusse tubular または紡錘状 fusiform の腫瘍です。
Dutton JJ: Optic nerve sheath meningiomas. Surv Ophthalmol 37:167-83.1992
そのためMRI検査で造影すると、軸位断(水平断)や矢状断では、低信号の視神経を挟む路面電車のレール様の高信号像がみられることが多く、Tram-track signと呼ばれます。
ONSMに包まれた視神経を残して、外科的に腫瘍のみを切除することは困難です。
仮に腫瘍のみを切除できたとしても視神経への血流が絶たれるため、失明は免れませんでした。
しかし最近の放射線治療の進歩によって、早期の症例では強度変調放射線治療 IMRT: intensity-modulated radiotherapy などによって視機能維持または改善が期待できるようになっています。
木村亜紀子: 視神経鞘髄膜腫. 眼科 60:133-9.2018