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特発性頭蓋内圧亢進症:IIH

頭蓋腔は頭蓋骨内面の硬膜で囲まれた閉鎖空間です。
脳脊髄液で満たされ、その中に脳が浮かんでいす。
頭蓋内圧(ズガイナイアツ)ICP: Intracranial pressure はこの閉鎖腔内の圧力で、正常では60-180mm水柱です。これは眼圧の単位であるmmHgに直すと4.4-13.2 mmHg になります。
ICPが急激に上昇(亢進)すると、激しい頭痛や悪心嘔吐の症状がみられます。

余談:頭蓋(骨)skullは辞書によって[ズガイ(コツ)]と読むもの、[トウガイ(コツ)]と読むもの、いずれもありますがhttps://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=183
頭蓋内圧は[ズガイナイアツ]が一般的のようです。

頭蓋内圧亢進の原因

頭蓋腔の内容は脳実質、血液、脳脊髄液であり、そのいずれかが増加すると頭蓋内圧が上昇します。

特発性頭蓋内圧亢進症 IIH

特発性頭蓋内圧亢進症 IIH: Idiopathic intracranial hypertensionは上記の頭蓋内器質病変なしに頭蓋内圧が上昇して慢性の頭痛を生じる原因不明の疾患です。
若い肥満女性に多く、原因として薬剤性、血栓によらない横静脈洞の狭窄などが疑われています。
Biousse V et al: Update on the pathophysiology and management of idiopathic intracranial hypertension. J Neurol Neurosurg Psychiatry 83:488-94.2012
眼底検査で視神経乳頭の浮腫であるうっ血乳頭が両側でみられ、その結果霧視を生じ、長期に持続すると不可逆性の視神経障害に至ります。

診断

診断には腰椎穿刺による頭蓋内圧上昇(>250 mmH2O)と正常な髄液所見、およびMRIでの脳静脈洞血栓症を含めた頭蓋内器質病変の欠如を確認することが必要です。

症例:Aさん、29歳女性

2か月前からの頭痛と高音の耳鳴り、1か月前からの目のかすみを訴え、紹介元の病院眼科を受診しました。
両側のうっ血乳頭を指摘されてMRI検査を受けましたが、頭蓋内病変は認められないために精査目的で大学病院眼科を紹介となりました。
体重:90kg、身長:165cmでBMI:33
視力は両眼とも裸眼で1.2でしたが、立ち上がると砂嵐のように見えづらくなるとのことです。
眼球運動には異常なく、眼底検査で両眼対称性の乳頭浮腫がみられました。
30-2中心視野検査はほぼ正常で中心フリッカー値は50/46 Hzでした。

腰椎穿刺にて髄液検査を行ったところ、色調は無色透明、細胞数、糖は正常で、初圧は350mmH2O以上あり、IIHとしてアセタゾラミド内服加療を開始しました。