老視は加齢による調節力の低下です。
完全な老視眼は固定焦点のカメラと同じです。
裸眼でピントが合ってはっきりと見えるのは、限られた狭い範囲に限定されます。
どの距離の範囲がはっきり見えるかは、正視、近視、遠視によって異なります
正視の目では遠方の景色は裸眼で見えますが、近くを見る際には凸レンズの老眼鏡(近用メガネ)が必要です。
近視の目では近くのスマートフォンや新聞の字は裸眼で読めますが、遠くのものをはっきり見るには凹レンズの遠用メガネが必要です。
遠視の目では裸眼ではどこにもピントが合わず、遠用と近用それぞれのメガネが必要になります。
正視、近視、遠視の程度はジオプター(D)で表され、正視は0D、近視はマイナス、遠視はプラスのDになります。
左右の目の屈折が2D以上差のある場合、不同視と呼ばれます。
不同視のうち、たとえば右目が正視(0D)で左目が-3Dの近視の人は、歳をとって老視になってもメガネなしの裸眼で遠くも近くも見えます。
遠くの景色は正視の右目で、近くのスマートフォンは近視の左目でピントが合うからです。
老視になっても不同視のおかげで、遠くも近くもメガネなしで見えることをモノビジョンと言います。
Aさんは73歳の女性で、間欠性外斜視の手術を受けました。
その時の両眼の視力は
RV = 0.2 (0.9 X -3.0D)
LV = 0.7 (1.0 X -0.5D)
斜視の術後の経過は順調でしたが、半年後に右目の白内障が進んでかすみを訴えて右目の白内障手術を受けました。
まだ老眼鏡なしの右目でスマートフォンの文字が読めていたので、右目の術後の屈折は-2.5Dを希望しました。
右目の手術は予定どおり成功し、術後は裸眼で遠くも近くも見えました。
しかし10年後、今度は左目の白内障が進み遠くのものがかすむようになりました。
RV(IOL眼)= 0.2 (1.0 X -2.5D)
LV = 0.4 (0.6 X -0.5D)
左目は裸眼で遠くが見えることを希望したので、正視ねらいの眼内レンズIOLを選択しました。
術後両眼ともIOL眼で
RV(IOL眼)= 0.2 (1.0 X -2.5D)
LV(IOL眼)= 1.0 (n.c.)
メガネの必要はなく裸眼で運転もでき、スマートフォンも読めます。