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黄斑円孔の求心性のゆがみ

黄斑円孔とは

黄斑は眼底の中央に位置する直径5.5mmの範囲です。
その中心に当たる中心窩に穴があく状態が黄斑円孔で、60歳代くらいの高齢者に多く発生します。
図上段の眼底写真では黄斑の中央に赤みのある穴が見えます。
網膜は層構造をしていますが、図下段の光干渉断層計(OCT)では網膜の最外層の網膜色素上皮を残して、その内側の視細胞層を含む内側網膜が裂けて穴が広がっている様子がわかります。

ゆがみが主症状

矯正視力は通常0.1程度に低下しますが、患者さんの訴えの主体は変視症というゆがみの症状です。
黄斑前膜の波打つゆがみとは異なり、相手の顔の周辺が中心部に向かって吸い込まれるようなゆがみで、中心部の鼻は見えません(右図ではうまく表現できませんでしたが、鼻の部分が黒い暗点になっているわけではありません)。
これは何故でしょうか?

ピンクッション変視症

黄斑円孔のゆがみのメカニズム大阪大学の齊藤喜博先生によって世界で最初に報告されました。
Saito, Y., et al. (2000). “The visual performance and metamorphopsia of patients with macular holes.” Arch Ophthalmol 118(1): 41-46.
この論文で発症後6ヶ月未満の黄斑円孔では中心暗点は検出できず、ピンクッションと呼ばれる求心性の変視症が多いことが報告されました。
ピンクッションはソファーの背あてに使うクッションの中央にピンを突き刺したときのしわです。

黄斑円孔では視細胞を含む網膜の裂け目が遠心性に広がります。
その結果、本来中心にあった視細胞が周辺に移動して、そこに映る鼻周囲の皮膚の像が中心にあるように脳が判断するため、求心性で中心暗点のないゆがみになります。
詳しくは上記論文をお読みください。