上斜筋麻痺の検査としてParks-Bielschowsky three-step testが有名です。
古森美和: 上斜筋麻痺 【斜視診断の基本】. あたらしい眼科 33: 1713-1720, 2016.
[上下/回旋偏位の原因が上斜筋麻痺かどうか]を、9方向向き眼位と頭部傾斜試験の結果から、3つのステップで調べます。
まず上下の直筋と斜筋、左右各4本を図のように記載します。
上転筋のうち主に外転時に働く上直筋は上段外側、内転時に働く下斜筋は上段内側です。
下転筋でも同様に下段外側に下直筋、下段内側に上斜筋を配置します。
まず上方にズレているのが右目か左目かを判断します。
下図のAの正面写真では右上斜視(写真では右眼で固視しているので左下斜視)であることがわかります。
その原因は右眼であれば下転筋である下直筋か上斜筋の麻痺です。
左眼であれば左下斜視なので、上転筋である上直筋か下斜筋の麻痺です。
そこでこの4筋がまず候補になります。
次に上下ズレが右方視と左方視のいずれで増強するかをみます。
(ステップ1での候補の4筋はすでに赤で印をつけてあります)
上図ではBの左方視で右上斜視がより顕著になることがわかります。
その原因は右眼であれば内転時の上/下転筋である下斜筋か上斜筋の麻痺です(右の下斜筋麻痺では内転時に右の上転が減弱するので右下斜視すなわち左上斜視が増強する)。
左眼であれば、外転時の上/下転筋である上直筋か下直筋の麻痺です。
そこでこれら4筋に印をつけると、候補は右上斜筋と左上直筋の2筋にしぼられます。
最後に頭部を左右どちらに傾斜した際に上下ズレが増強するかをみます。
上図のCで、右への頭部傾斜で右眼が上転していいます。
その際、右眼は内方回旋、左眼は外方回旋するので、右眼の内方回旋筋である上直筋と上斜筋、左眼の外方回旋筋である下直筋と下斜筋に印をつけます。
その結果右の上斜筋が残り、右上斜筋麻痺と診断できます。
ただしMRI冠状断撮影で上斜筋の委縮がみられ、形態学的にも上斜筋麻痺と診断されたケースについて検証したところ、three-step testのすべてを満たしたのは70%にすぎなかったとされています。
Manchandia AM, Demer JL: Sensitivity of the three-step test in diagnosis of superior oblique palsy. J AAPOS 18: 567-571, 2014.