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視神経乳頭黒色細胞腫

眼底検査で視神経乳頭部に見られる黒色あるいは暗褐色の病変は視神経乳頭黒色細胞腫(メラノサイトーマ)Melanocytoma of the optic discです。

死に至ることのある悪性腫瘍の脈絡膜メラノーマに見た目は類似しますが、基本的には良性腫瘍(メラノサイトーマ)で、通常は悪性化することはありません。
ただし例外的(2%程度)は悪性のメラノーマに転化して生命を脅かすことが報告されています。
Shields JA et al. Melanocytoma of optic disc in 115 cases: the 2004 Samuel Johnson Memorial Lecture, part 1. Ophthalmology 2004;111:1739-1746.

進行性の拡大

悪性のメラノーマのような急速な進行ではありませんが、毎年写真撮影するとサイズが徐々に拡大することはあります。
図の症例では14年間に明らかな増大が見られ、その後10年経過していますが、転移などなく存命です。

視野障害の進行

経過中に視力、視野が障害されることもあります。
その機序は、マリオット盲点の拡大以外に、腫瘍による直接あるいは間接的な視神経線維束の圧迫が考えられています。
土師祐子他:視野異常を伴った視神経乳頭黒色細胞腫の2例. 臨床眼科 2017;71:1513-1518.
古田実. 脈絡膜母斑、脈絡膜メラノーマ、視神経乳頭黒色細胞腫. あたらしい眼科 2020;37:41-51.
図に示す11年間の経過例では、検眼鏡的には腫瘍の拡大は明らかではありませんでしたが、ハンフリー30-2視野にて明らかな進行が確認されました。
篩状板付近での腫瘍の拡大による神経線維束の圧迫が原因と考えています。