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Duane症候群

Duane症候群動眼神経から外直筋への異常神経支配によって、内転時に瞼裂狭小と眼球陥凹を生じる先天性の病気です。
そのため眼球後退症候群Duane retraction syndromeとも呼ばれます。

外直筋への動眼神経異常支配

本来、外直筋は外転神経から、内直筋は動眼神経から信号を受けて収縮します。
例えば下図左の左方視では、左眼の外直筋は外転神経から信号を受けて収縮し左眼は外転しますが、下図中央の右方視で左眼が内転する際には外直筋を収縮させる信号は来ません。
右方視では動眼神経からの信号で左眼の内直筋が収縮しますがその時、外直筋は受動的に伸展します。
しかし下図右の左眼のDuane症候群では右方視の際に左眼の外直筋に連絡している異常神経支配の動眼神経の働きで、左眼の内直筋だけでなく外直筋も収縮します。
そのため眼球が後方に引かれて眼球陥凹を生じ、その結果として瞼裂狭小がみられます。

症状

臨床では通常片眼の眼球運動障害(外転制限、内転制限あるいはその両者)と眼位異常やその結果としての頭位異常(多くは顔回しface turn)を主訴として眼科を受診します。
林孝雄. Duane症候群の臨床的背景と手術効果からみた治療戦略. 眼科臨床紀要 2018;11:20-26.

病態

外転と内転の制限の組み合わせから3型に分類されます。
Ⅰ型:外転制限+内転時の瞼裂狭小と眼球陥凹
Ⅱ型:内転制限+内転時の瞼裂狭小と眼球陥凹
Ⅲ型:外転と内転両者の制限+内転時の瞼裂狭小と眼球陥凹
下図は左眼のⅠ型で図右の左方視時に左眼の外転ができません。
また図左の右方視時に上方から観察すると左眼が奥に引っ込む眼球陥凹を生じて、正面から見ると上下のまぶたの間が狭くなる瞼裂狭小を示します。

筋電図でわかる病態

異常神経支配のようすは内/外直筋の筋腹に針電極を刺す筋電図の結果から推測できます。
林孝雄. Duane症候群の診断と治療. 眼科 2014;56:733-737.
下図の+は電極を刺入した筋で放電が記録されたことを示します。
赤の表と青の表は同じ内容で列を並べ替えただけですが、青の表でみると3つの型のいずれでも内転時に内直筋と外直筋が収縮することがわかります。