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虹彩捕獲 iris capture

眼内レンズIOL: intraocular lensは通常、光学部(レンズ)と支持部(IOLの足)の2つのパートからできています。
虹彩捕獲iris captureあるいは瞳孔捕獲pupillary captureは、光学部の一部が虹彩の前方に移動して 瞳孔から顔を出し瞳孔縁に挟まれた状態です。
小堀朗. 眼内レンズ瞳孔捕獲. In:前眼部アトラス, 総合医学社.448-9. 2020

後房IOLの固定状態と虹彩捕獲

白内障手術後の後房IOLの固定状態には以下の3種類があります。
1. 嚢内固定:IOL全体が水晶体嚢で包まれて、IOL支持部は水晶体嚢内におさまる
2. 嚢外固定:IOLは水晶体嚢の外で前嚢と虹彩の間にあり、IOL支持部は虹彩と毛様体の間の溝である毛様溝に位置する
3. 強膜固定:水晶体嚢は存在せず、IOL支持部は毛様溝にあり、支持部ループが強膜に縫着(縫着固定)、または強膜壁を貫いて固定(強膜内固定)されている
虹彩捕獲はそのいずれでも生じますが、最近では強膜固定で生じる場合が多くみられます。

症例

図左は外傷性白内障とチン小帯断裂に対して、水晶体摘出、IOLの毛様溝縫着術を他医で受けた55歳男性の右眼の手術時の模式図で、虹彩を消して示してあります。
毛様溝に位置するIOLの支持部は、ループに結びつけただ糸(図の赤)で強膜半層フラップの下の強膜に縫合固定されています。
逆瞳孔ブロックの防止目的で周辺虹彩切除が上方にされていて、散瞳時と縮瞳時に、虹彩は図中央と右のようにIOLの前でスムーズに動きます。

虹彩捕獲

術後2か月目の朝に目をこすった後、見え方の異常にきづいた際の写真とそのシェーマを図に示します。
IOLの光学部と支持部が合流する2か所は虹彩下にありますが、その間の半周部分の両翼が虹彩の前に出てきた状態になっています。

対応

散瞳点眼薬で散瞳すると捕獲された虹彩は解除され、その後ピロカルピン点眼で縮瞳することで、IOL光学部は虹彩下に収まりました。
しかし再度、虹彩捕獲を繰り返すようなら、ポリプロピレン糸によるブロック縫合、あるいは虹彩縫縮術を検討することになります。
山根真, 太田俊彦, 森山涼, 永田万由美: 手術相談室 症例呈示 Marfan症候群の水晶体脱臼に対する水晶体再建術後に虹彩捕獲を繰り返した症例. 眼科手術 33:425-9.2020