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先天性鼻涙管閉塞開放術

先天鼻涙管閉塞 CNLDO

まぶたやまつげに異常がなく、持続する流涙と眼脂を主訴に受診する生後数か月の乳児の多くは先天鼻涙管閉塞CNLDO: congenital nasolacrimal duct obstructionです。
経過観察で改善がみられなければ、治療はプロービングprobingと呼ばれる先天性鼻涙管閉塞開放術 (K201: 3,720点)が行われます。
種々のサイズのブジー図のバンガーター針(先端が鈍で側面に通水用の窓のあいた涙管洗浄針)を上下いずれかの涙点から挿入して涙小管を進み涙嚢に達します。
その後方向を下方に変更して鼻涙管先端の膜様閉鎖を盲目的に突き破る手技ですが、これをいつの時期に誰がどのように行うかが問題です。

最近のケース

眼科医経験45年の筆者は、涙道の専門家ではありませんが、これまで1-2年に1度程度は行う経験がありました。
今回、左目の流涙を訴える生後2か月の男児例を外勤先の眼科外来で経験しました。
抗菌点眼薬の使用は眼脂の多い時に限定し、涙嚢マッサージを指示して経過をみました。
しかし生後6か月になっても流涙がおさまらないので、プロービングに関して現在推奨されている下記2つの選択肢を説明しました。
1. 早期プロービング:生後6か月で大人の手で患児の体と頭部を押さえつけて行う局麻プロービング
2. 晩期プロービング自然治癒を期待して生後1年まで待ち、治癒しない場合に行う全麻プロービング体動の制御が生後6カ月なら容易ですが、1歳過ぎると困難になるため)
松村望: 先天鼻涙管閉塞への対応 日本の眼科 89:305-9.2018
長期予後に関して両者に差がないことを説明したところ、母親は入院全麻の負担を回避できる可能性がある早期プロービングを希望しました。

局麻プロービング

眼科外来のベッド上で母親と看護師の協力のもと、手術顕微鏡下25Gバンガーター針を使用してプロービングを行いました。
穿破の感触はありましたが、直後の涙管洗浄では鼻水や飲水は確認できませんでした。
成功していなければ、1歳まで待って専門施設での全麻下、内視鏡プロービングを勧めるつもりで1か月後の再診としました。
幸い、1か月後の受診時に[前回の処置の翌日から流涙はなくなりました]との報告を母親から受け、色素残留試験FDDT: fluorescein dye disappearance testでも、フルオが消失することを確認して安堵しました。