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抗がん剤:パクリタキセルによる嚢胞様黄斑浮腫

パクリタキセル(商品名:タキソール)は細胞分裂に必要な紡錘糸に含まれる微小管の脱重合を阻害することで、抗がん剤としての効果を発揮します。
nab(nanoparticle albumin-bound)パクリタキセル(商品名:アブラキサン)は水に溶けにくいパクリタキセルをヒトアルブミンに結合してナノ粒子化した製剤です。
パクリタキセルやnabパクリタキセルなど、タキサン系微小管阻害薬のまれな眼科副作用として黄斑浮腫があります。

症例:Aさん、74歳女性

Aさんは1年前に肺癌と診断されてカルボプラチン(白金製剤抗がん剤)+パクリタキセル+放射線治療を受けました。
その後nabパクリタキセルに切り替えて7回目の投与中、両眼のかすみを訴えて大学病院眼科を紹介されました。
矯正視力は0.7/0.5で、OCTにて両眼の黄斑浮腫図中段)がみられ、これが視力低下の原因と考えられました。

病変が両眼対称性で経過からnabパクリタキセルの副作用と診断し、外科の主治医に伝えました。
治療を2か月間中断したところ、矯正視力は0.8/0.8に改善しOCTも正常化(図下段)しました。
今後、OCTをモニターしながら投薬を再開する予定です。