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近視眼での緑内障診断の難しさ

近視は重要な緑内障の危険因子のひとつです。
Marcus MW et al Myopia as a risk factor for open-angle glaucoma: a systematic review and meta-analysis. Ophthalmology 2011;118: 1989-94
しかし眼軸長が26mmを超える強度近視では視神経乳頭が変形していて、乳頭陥凹拡大による緑内障の診断が容易ではありません。
また固視点近傍に暗点がみられやすいので、通常の24-2視野では緑内障に特有な視野変化がわかりにくくなります。
そのような目では10-2視野を測定することや垂直方向のOCTで神経線維層(NFL)の厚みの上下非対称局所性の菲薄化が緑内障診断に役立ちます。
赤木忠道 OCTとOCTA(特集 緑内障の新しい診療法とその評価). 臨眼 2019;73: 1506-11
板谷正紀 強度近視眼の緑内障評価. 眼科 2019;61: 21-31

症例

60歳の男性Aさんは4年前に飛蚊症で近医を受診してその際の両眼の矯正視力は1.0でした。
3カ月くらい前から右目でみると視野の中心に砂がかかったような線が見えてみづらいとの主訴で、同じ眼科医院を受診しました。
右眼の矯正視力は0.4と低下し、眼圧は20/18mmHgでした。
右の視神経乳頭陥凹がみられたので、24-2視野を施行されましたが、軽度の異常のみでした。
そこで原因不明の視力低下として大学を紹介されました。

大学病院初診時の視力は
RV=0.02(0.6 X -9D cyl -1.25D Ax 170)
LV= 0.04(1.2 X -9D cyl -0.5D Ax 10)
眼圧は20/17mmHg
右の視神経乳頭の陥凹は拡大していて、よく見ると8時-9時の乳頭縁から神経線維欠損 NFLD: Nerve fiber layer defect が観察されます。

右眼のOCTの垂直スキャンでみると矢印で示すように、中心窩のすぐ下の神経線維層(NFL)局所的に菲薄化していて、上方にも限局性の菲薄化がみられました。

10-2の視野検査では固視点に接する耳側上方1.4度のポイントの感度が11dBと高度に低下し、中心窩閾値も25dB(正常では33dB以上)と低下していました(前医での視野検査では中心窩閾値測定をオフにしていて不明でした)。
強度近視に伴う正常眼圧緑内障NTG: Normal tension glaucomaとして点眼治療を開始しました。