非結核性抗酸菌(Nontuberculous Mycobacteria: NTM)症は近年増加傾向にあります。
そのうち、肺M. avium症と肺M. intracellulare症を併せた肺MAC (Mycobacterium avium complex)症には抗結核薬であるエタンブトール(EB: ethambutol)が使用されますが、結核よりも長期の治療期間を要することが多いため、EB視神経症:EON(EB-induced optic neuropathy)に対する注意が重要です。
EONの発症頻度は0.44 – 6 %程度で、早期に投薬を中止すれば視機能障害は回復します。
篠田啓: 他科領域薬剤による後眼部副作用. 日本眼科学会雑誌 127:515-31.2023
そこで早期発見のための眼科定期検査が重要になりますが、検査間隔や内容など具体的方法に関するコンセンサスは得られていません。
中馬秀樹:薬物性視神経症. あたらしい眼科 35:1351-7.2018
EBを処方する内科医から眼科医へ検査依頼があった場合の対応の要点が、[日眼の見解]として日眼ホームページ、2022/03/09付けのお知らせに掲載されました。https://www.nichigan.or.jp/news/detail.html?itemid=489&dispmid=1050
[呼吸器内科医がエタンブトール投与に際して行うべき眼科的副作用対策]という日眼見解の要点は表の3点です。
しかし残念ながら各項目の解説はあいまいで改訂が必要と思われます。
早期発見のためのセルフチェックとして日眼見解では[毎朝,片眼ずつ,一定の距離で新聞などの文字を読み、見えにくくなっていないか確認することを患者に教育する]、とされています。
セルフチェックでの[片目ずつ]は重要なので、[右または左の目を自身の片手で隠して]という具体的方法まで指示したほうがよいでしょう。
[自覚症状がなければ1~3か月ごと,自身で毎日自己評価できる患者は3か月に一度,眼科で定期的に評価を受ける]というのが日眼の見解です。
しかし1. のセルフチェックを毎回指導すれば、眼科受診は3か月ごとに統一してよいのではないかと思われます。
[視力検査(矯正視力)は必須で,視野検査も行う.必要に応じて,中心フリッカ検査も行う.色覚検査(石原式),アムスラーチャート(簡易な中心視野検査)も早期発見に有用である.]という日眼の見解では、実際に毎回の受診で何を行えばよいのか不明瞭です。
また中心暗点をチェックするにはアムスラーチャートよりも河本式中心暗点計https://meisha.info/archives/952のほうがはるかに高感度です。
さらに中心フリッカー検査や石原式色覚検査には異常と判定する基準がないので、投薬中止の判断には不適当ではないでしょうか。
そこで筆者のお薦めは表のごとくです。