硝子体嚢腫 Vitreous cystは硝子体中に存在する嚢胞性病変で、1. 視神経乳頭に固着するもの(図左)と、2. 硝子体中を自由に浮遊するもの(図中央と右:硝子体中の嚢腫にピントを合わせたため眼底像はぼやけているが嚢腫の移動がわかる)の2つのタイプがあります。
後者は通常無症状ですが、移動して視覚遮断による症状を訴える場合には、手術あるいはレーザー光凝固による嚢破壊を行うことがあります。
Gass JDM. Stereoscopic atlas of macular diseases diagnosis and treatment 4th edition. P.964: Mosby-Year Book. 1997
左眼では見えていないようだとして前医を受診、0.7/0.02と左眼の視力不良を指摘され、その精査目的で大学病院眼科を紹介されました。
なんとか撮影できた左眼の超広角眼底カメラ(オプトス)の4枚の写真(4分割図)では、半透明の大きな硝子体嚢腫が硝子体中を移動するようすがわかります。
(大きさが変化しているのは移動で網膜との距離が変化するためと思われます。)
なお右眼では輪状反射がはっきりみられる(図左)のに対して、著明な外方回旋を示す左眼では欠如していて(図右)、これが左眼の視力不良の原因と考えられました。
左眼の視力低下の主因は硝子体嚢腫ではなく、著明な外方回旋で生じた黄斑の発達異常に関連する器質的変化と判断して、弱視治療は行わず経過観察の予定です。