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調節の仕組みと老視

調節は水晶体の厚みを変化させて見ようとする対象にピントを合わせる機能です。
近視でも遠視でもない正視の目では、水晶体が一番薄い時(図の青色水晶体)青色の平行光線が網膜中心に集光するのでピントは遠方に合っています。
一方、手元を見る時は水晶体を厚くして(図の赤色水晶体)赤色の開散光線を網膜中心に集光させてスマホの文字にピントを合わせます。
水晶体の厚さを変える仕組みはどうなっているのでしょうか?

調節で水晶体が厚くなるメカニズム

水晶体は中央の水晶体核とその周りの水晶体皮質を包む水晶体嚢から成り、チン小帯という多数の線維によって毛様体に吊るされた状態で虹彩後方に位置します(A)
[桶のたが]のような毛様体の中を毛様体輪状筋が水晶体を取り囲む一周しています(図左端の立体図)
調節していない状態でチン小帯に引っ張られた水晶体の厚みは最も薄く(A)毛様体輪状筋が収縮すると[毛様体のたが]の直径が小さくなり、チン小帯が緩んで牽引力が減るため(B)、水晶体はその弾力性によって厚くなります(C)

老視の機序

高齢になると水晶体皮質の割合が減って、代わりに水晶体核が水晶体の大部分を占めるようになります。
すると、水晶体の弾力性が失われてチン小帯が緩んでも水晶体は厚くなれません。
これが近方へのピント合わせができなくなる老視のメカニズムです。