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ドライアイのタイプ

ドライアイは[涙液層の安定性が低下する病気]とガイドラインでは定義されます。
このうち涙液減少型ドライアイに含まれるシェーグレン症候群などの乾性角結膜炎では、涙腺から分泌される涙の量の不足で涙液層が不安定になりますが、涙の量以外の要因には何があるでしょうか?

涙の構成

まぶたを開いた状態で角膜表面に形成される涙液膜tear filmの大部分は、蛋白質や電解質を含む水の層である①液層で、主に涙腺から分泌されます。
液層の表面には②油層があり、まぶた内部の瞼板にあるマイボーム腺から分泌されます。
液層の下の角膜上皮は③膜型ムチンを主成分とするグリコカリックスglycocalyxで覆われています。
これは以前、3層構造とされていた涙の最下層のムチン層に相当しますが、現在では上皮の一部と考えて、涙液層は油層と液層の2層とされています。

上記の①~③はいずれも涙液層の安定化に重要で、それぞれの不足や破綻によって3つのタイプのドライアイが分類されています。

最近はこの3つに加えて、まばたきでのまぶたによる角膜表面の摩擦亢進も、ドライアイ発症に関わる重要なメカニズムのひとつとされてきています。

島崎潤, 坪田一男, 横井則彦, et al.: ドライアイ診療ガイドライン ドライアイ診療ガイドラインの読み方. 日本眼科学会雑誌 123:489-592.2019

蒸発亢進型ドライアイ

マイボーム腺から分泌される油は涙液膜の表面をカバーして、その下層の水分の蒸発を防いでいます。
マイボーム腺機能不全症 MGD: Meibomian gland dysfunctionと呼ばれる病気で油の分泌が減少すると、開瞼時の眼表面からの涙の蒸発増加により涙液層の安定性が低下してドライアイの症状を示すようになります。

福岡詩麻, 有田玲子: マイボーム腺機能不全とドライアイ. あたらしい眼科 35:919-23.2018

水濡れ低下型ドライアイ

一般に細胞は脂質二重層と呼ばれる油でできた細胞膜で囲まれていてそのままでは水をはじきます。
角膜上皮表面のグリコカリクスの部分では、膜型ムチンと呼ばれる糖タンパクが細胞膜表面から突き出た構造になっていて水濡れをよくしています。
ムチンの油に親和性の高い(疎水性という)蛋白部分が細胞膜に埋まり、水になじみやすい(親水性)突き出た糖鎖の部分が涙となじむからです。
このムチンの量が減ると涙の量が十分でも角膜上にtear filmがうまく形成されず、涙液層が不安定となり水濡れ低下型のドライアイ症状を示します。
なお涙の液層中にも結膜杯細胞から分泌される分泌型ムチンが含まれています。