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急速増大した眼瞼腫瘍

眼瞼腫瘍で診る機会の多いのは良性腫瘍の母斑と脂漏性角化症です。https://meisha.info/archives/695
数年を経過しても通常、気づくほどの大きさの変化はありません。
数カ月単位の写真記録で増大がわかる場合、脂腺癌や基底細胞癌などの悪性腫瘍の危険性があります。

症例:79歳女性

右の下眼瞼外側にイボがあったことには以前から気づいていましたが、最近2週間で急速に大きくなったとして、近くの眼科医を受診し、悪性腫瘍の疑いで大学病院眼科を紹介されてきました。

悪性腫瘍だとしても2週間での増大は速すぎるので、急速増大で有名なケラトアカントーマなどを念頭に外来で突起部分を根元からそぎ切って病理組織検査に提出しました。
*注:ケラトアカントーマ(keratoacanthoma,角化棘細胞腫)は数週〜数か月で急速に増大して,噴火口状の陥凹を伴うドーム状の結節を形成します。
特殊な有棘細胞癌とする考え方もありますが、日眼誌の綜説では良性腫瘍に分類されています。
小幡博人: 眼瞼腫瘍の診療の要点. 日本眼科学会雑誌 123:785-804.2019

1週間後、切除皮膚面はきれいに修復されていました。

病理報告

病理診断:脂漏性角化症
錯角化を伴う皮膚組織で表皮は乳頭状に肥厚し、基底細胞様の細胞が増生してsquamous eddy(渦形成)やメラニン色素の沈着が散見され、軽度の異型がみられるが明らかな悪性所見はみられず、脂漏性角化症sebhorrheic keratosisと診断される。

急速増大する脂漏性角化症

最近の論文でも2カ月の短期間に3cmもの長さの棍棒状に成長して皮角cutaneous hornを呈した脂漏性角化症の症例(67歳アジア系男性)が報告されています。
Chen S, et al: Cutaneous horn masquerading as a seborrheic keratosis. Am J Ophthalmol Case Rep 4:64-6.2016
皮角は動物の角のように突出する角質の変化で、基盤となる皮膚病変としては良性、前癌状態、悪性のいずれの場合もあります。
そのうち良性の病変として、脂漏性角化症が最も多かったと報告されています。
Mencia-Gutierrez E, et al.: Cutaneous horns of the eyelid: a clinicopathological study of 48 cases. J Cutan Pathol 31:539-43.2004