黄斑部の網膜下に卵黄様の黄色病変がみられる黄斑ジストロフィは卵黄状黄斑ジストロフィVitelliform macular dystrophy: VMDと呼ばれます。
Best病とも呼ばれ、BEST1遺伝子の異常による常染色体優性遺伝病です。
以前は小児期に発症すると考えられていましたが、非典型例は中年以後にみられることもあります。
病期の進行によって、前卵黄期、卵黄期、偽蓄膿期、炒り卵期、委縮期の異なる黄斑部変化を示します。
委縮期に至るまでは眼底所見の割に矯正視力は良好です。
近藤峰生ほか: 黄斑ジストロフィの診断ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123: 424-442, 2019.
角田和繁: 卵黄様黄斑ジストロフィ. 眼科 57: 641-645, 2015.
ベスト病の黄斑部にみられる黄色物質は網膜下に蓄積した異常リポフスチンとされています。
上野真治: BEST1遺伝子関連疾患. OCULISTA:18-24.2019
リポフスチンは強い自発蛍光を発するので、診断には右図下段のような眼底自発蛍光撮影FAFhttps://meisha.info/archives/342が有用です。
ただしスターガルト病でみられるフレックでも自発蛍光は増強します。
また多くの黄斑ジストロフィでみられる網膜色素上皮の委縮では自発蛍光の減弱消失を示します。
これら黄斑ジストロフィを疑う場合は眼底カメラ撮影に加えてFAFが必須です。
ベスト病の診断には眼球電図(electro-oculogram: EOG)の異常が重要です。
これは主に網膜色素上皮が起源となる眼球常存電位の反応異常です。
BEST1遺伝子がコードするベストロフィンbestrophin蛋白は網膜色素上皮の基底側の細胞膜に存在して、カルシウム依存性塩素イオンチャンネルとして機能しています。
このイオンチャンネルの異常は眼底全体に拡がっているためEOGの異常を生じます。
しかし、そのことが黄斑部という網膜局所でのリポフスチン沈着にどのように関わるのか、詳しくはわかっていません。