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虚血性視神経症

虚血性視神経症の多くは眼窩内前半の視神経を栄養する短後毛様動脈の閉塞で視神経乳頭が腫脹する前部虚血性視神経症(AION: anterior ischemic optic neuropathy)です。
前久保知行: 虚血性視神経症. OCULISTA: 15-22, 2018.
それより中枢側で視神経の栄養血管が閉塞する後部虚血性視神経症(PION: posterior ION)では眼底に異常はみらません。https://meisha.info/archives/1490

視神経乳頭の蒼白腫脹

視神経乳頭の腫脹は視神経乳頭炎でも見られますが、AIONでは上下いずれかの短後毛様動脈が閉塞するため、腫脹した視神経乳頭の上半あるいは下半が蒼白で、フルオレセイン蛍光眼底造影写真(FA)の早期には充盈欠損による低蛍光を示します。
視野ではその反対側が欠ける水平半盲がよくみられます。
図の左眼では視神経乳頭の上半の赤味が少なく蒼白で、FAでは上半の蛍光漏出が減弱し、挿入図の30-2ハンフリー視野では下半の水平半盲です。

動脈炎性と非動脈炎性

AIONは巨細胞性動脈炎による動脈炎性AION非動脈炎性AIONに分類されます。
他眼発症リスクで両者の差は大きく鑑別が重要です。

動脈炎性AION

片眼性の動脈炎性AIONで治療されなかった場合、1週間以内に反対眼に視力低下をきたす例が5割以上との報告があります。
Liu GT et al: Visual morbidity in giant cell arteritis. Clinical characteristics and prognosis for vision. Ophthalmology 101: 1779-1785, 1994.
診断確定には側頭動脈の生検による病理診断が必要ですが、両眼の失明回避のために、1. 50歳以上、2. 頭痛、3. 側頭動脈に沿う圧痛や拍動低下、4. 1時間値で50mm以上の血沈(ESR)の亢進を満たす臨床診断に基づいて治療を開始することが勧められます。
治療はメチルプレドニゾロン0.5-1.0g/日のステロイドパルス治療3日間とその後のPSL 1mg/kg/日の投与です。
https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_isobe_h.pdf

非動脈炎性AION

本邦では動脈炎性AIONはまれで非動脈炎性AIONが多くみられます。
中馬秀樹: 虚血性視神経症. 臨床眼科 73: 197-201, 2019.
全身的な危険因子として、糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害、睡眠時無呼吸症候群などがあり、局所的な危険因子は乳頭陥凹が目立たない小乳頭です。
図は上記症例の他眼で、視神経乳頭の陥凹は不明瞭です。
篩状板を通過する神経線維が混み合いそのため循環障害で虚血に陥りやすく、”disc at risk”と呼ばれます。