• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

新生児網膜出血

乳幼児の眼底出血は虐待性頭部外傷AHT: abusive head traumaの診断に重要です。https://meisha.info/archives/1603
しかし乳幼児の眼底出血は虐待以外の種々の原因でも生じることがあります。
裁判で被告となるAHTの加害者の弁護人がその点を主張することはよくあります。
そのようなAHT以外の眼底出血として新生児網膜出血があります。

新生児網膜出血

AHT同様の両眼性びまん性の網膜出血は、正常新生児でもよく見られ、新生児網膜出血Neonatal retinal hemorrhage or Retinal hemorrhage in newbornと呼ばれます。
多くの報告があり、吸引分娩>経膣通常分娩>帝王切開の順で多く見られるため産道通過時の頭部あるいは眼部圧迫によって生じると考えられています。

新生児網膜出血の消失時期

しかし出生のほぼ1日以内に検査した正常な新生児の眼底検査結果では、149人中34%の高頻度で網膜出血がみられたものの、4週後にはほぼすべてで出血は吸収されていました。
Emerson MV et al: Incidence and rate of disappearance of retinal hemorrhage in newborns. Ophthalmology 108: 36-39, 2001.
したがって生後1カ月以後の乳児の眼底出血であれば、これが出産に伴う新生児網膜出血の名残だとする主張は却下できるとされます。