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ブルーライトと睡眠障害

ブルーライト

ブルーライトは波長が380~500nm(ナノメートル:ミリメートルの千分の一)の青色光です。http://blue-light.biz/about_bluelight/
ブルーライトはパソコンやスマートフォンなどのディスプレイから発する光に多く含まれ、夜間に至近距離で見ることによる睡眠障害は広く知られています。
https://kentei.healthcare/info/column/?p=2653
その理由はブルーライトと概日リズム(circadian rhythm)との関係にあります。

概日リズムとipRGC

ヒトの概日リズムをコントロールしているのは視床下部の視交叉上核(SCN: suprachiasmatic nucleus)です。
SCNは概日リズムを明暗変化に同調させるため、一部の網膜神経節細胞(RGC: retinal ganglion cell)から刺激を受けています。
この細胞は内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC: intrinsically photosensitive RGC) と呼ばれ、別名はメラノプシン含有網膜神経節細胞(mRGC: melanopsin-expressing RGC) です。
羽鳥恵: 内因性光感受性網膜神経節細胞による体内時計の調節. あたらしい眼科 31: 199-203, 2014.
ipRGCの一部は視蓋前域から動眼神経Edinger-Westphal核(E-W核)にも投射して対光反射の入力系としても機能します。
石川均: 瞳孔とメラノプシンによる光受容. 日眼会誌 117: 246-269, 2013.

メラノプシン

ipRGCはメラノプシンという光受容体で光をキャッチします。
これは9種類あるヒトオプシン分子のひとつですが、視覚には関係しません(non-visual opsin)。https://meisha.info/archives/2046
ipRGCから入力を受けた視交叉上核の神経細胞はさらに松果体に投射されメラトニンの分泌を制御します。

メラトニン

メラトニンは松果体で合成されるホルモンで、脈拍、体温、血圧を低下させて睡眠に向かわせる機能があります。
分泌量には日内変動があり、夜間に分泌が増えますが、朝になって太陽光を浴びると分泌が抑制されます。
網膜→視交叉上核→松果体の経路でメラトニンの分泌を抑制するipRGCのメラノプシンは、ブルーライトに含まれる460-480nmの光に最も強く反応します。
そのため夜間、就眠前に至近距離でスマートフォンを見ることでメラトニンの分泌が抑制されて睡眠が障害されるのです。