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先天上斜筋麻痺

先天上斜筋麻痺は主に頭位異常(眼性斜頸)によって乳幼児期に気づかれます。
上斜筋の主作用は内方回旋と内転時の下転https://meisha.info/archives/2115のため、これらの眼球運動が不要になる頭位をとります。
すなわち図に示す右の先天上斜筋麻痺では、健側である左への頭部傾斜 head tiltで右眼は外方回旋し、健側(左)への顔回し face turn顎引き chin downによって患側である右眼が外上方視するような頭位をとります。

代償不全型と後天性上斜筋麻痺

上斜筋麻痺には先天性以外に代償不全型後天性の2つの病型があります。
代償不全型の上斜筋麻痺は小児期以後に、上下複視などの代償不全症状で発見されます。
河野玲華: 先天(特発)上斜筋麻痺の診断. 眼科 56: 59-64, 2014.
後天上斜筋麻痺後天滑車神経麻痺とほぼ同義で、血管障害や頭部外傷などによる頭蓋内の滑車神経障害https://meisha.info/archives/1407で発症し、回旋複視を訴えます。
三村治. 神経眼科学を学ぶ人のために.  157-161 (医学書院, 2014).

上斜筋の委縮や欠如

先天上斜筋麻痺では眼窩冠状断のMRI像で、上斜筋の欠損や委縮が確認できる例が多数あります。

一方後天性の滑車神経麻痺でも上斜筋の委縮がみられることがあります。
河野玲華, 大月洋: 上斜筋委縮の定量的判定基準値の検討. あたらしい眼科 31: 295-298, 2014.
滑車神経麻痺に続発して上斜筋の委縮が生じることは、サルの滑車神経切断実験で確認されています。
Demer JL et al: Effects of intracranial trochlear neurectomy on the structure of the primate superior oblique muscle. Invest Ophthalmol Vis Sci 51: 3485-3493, 2010.

先天上斜筋麻痺の原因は滑車神経の形成不全?

上斜筋の委縮や欠損がみられる先天上斜筋麻痺症例では、高精度のMRI画像で同側の滑車神経が欠損していることが多数例で報告され、滑車神経の形成不全によって上斜筋の委縮が生じている可能性が推測されています。
Yang HK et al: Congenital superior oblique palsy and trochlear nerve absence: a clinical and radiological study. Ophthalmology 119: 170-177, 2012.

手術

多くの先天上斜筋麻痺の治療目的は斜頸の矯正であり、かつ続発性の下斜筋過動を気にする両親が多いこともあり、治療の第一選択は下斜筋減弱術である下斜筋後転術または下斜筋切除術です。
ただし正面視で15△以上の上下斜視がみられる場合には、上直筋後転術、反対側の下直筋後転術、同側の上斜筋腱縫縮術などの追加を検討します。
彦谷明子: 先天上斜筋麻痺の手術. 眼科 56: 505-510, 2014.