• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

転移性虹彩腫瘍

虹彩、毛様体、脈絡膜はいずれもメラニン色素を含み血流が豊富でぶどう膜と呼ばれます。
このうち悪性腫瘍の転移の多くは脈絡膜でhttps://meisha.info/archives/2423虹彩転移は比較的まれです。
原発巣は脈絡膜転移と同様、乳癌、肺癌が多いとされています。
症状はないこともありますが、視軸をふさぐことによる視力低下や眼圧上昇による痛みを訴えることもあります。

症例:72歳男性

患者さんは直腸癌からの多発肺転移のため、呼吸苦を訴えて入院し、放射線治療を受けていました。
入院中、右目の視力が低下したとして、眼科を紹介されました。
矯正視力は右0.01、左1.0、眼圧は35/18mmHgでした。
右目の前房内は角膜浮腫のため透見不良ですが、瞳孔下縁と耳側周辺の虹彩に白色腫瘤が観察され、表面には新生血管を生じていました。
呼吸困難のため座位での検査が制限され、隅角検査を行えず、眼圧上昇の正確な機序は不明でした。

頭部MRIにて右虹彩の腫瘍だけでなく、多発脳転移も確認されました。
追加の放射線治療の計画中、眼科初診から1カ月後、呼吸不全で亡くなりました

転移性虹彩腫瘍に対して針生検による細胞診で病理学的診断を行った報告もありますが、本例では経過と臨床所見から直腸がんの虹彩転移と診断してよいと思われます。
Mitamura M et al: A Case of Metastatic Iris Tumor Observed With Anterior Segment Optical Coherence Tomography Before and After Radiation Therapy. In Vivo 34: 2159-2162, 2020.