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転移性脈絡膜腫瘍

癌治療の進歩による生存率の向上https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20211110c.htmlに伴い、眼科領域でも転移性腫瘍を診察する機会は増えています。
転移先で最も多いのは、血流豊富な脈絡膜です。
最近10年間に大学病院の眼科初診外来に紹介された転移性の腫瘍13例中10例が脈絡膜転移で、原発巣としては乳癌が6例と最多でした。
女性の乳癌全体の10年生存率は87.5%と報告されていて、長期生存の担癌患者さんが増えているためと考えられます。

症例:34歳女性

患者さんは6年前に右の乳癌と診断されホルモン療法(タモキシフェン+リュープリン)中でした。
2週間前から左目の右上視野の暗さを訴えて近医を受診、眼底の異常を指摘され大学病院眼科に紹介されました。
なお最近のPET/CT検査では多発骨転移はみられるものの明らかな症状はありませんでした。
視力は矯正なしで両眼とも1.2と良好でした。

眼底所見

左目の黄斑部下方に灰白色の扁平な隆起が見られ、眼底自発蛍光図右上)では網膜下液による過蛍光が下方に広がっています。
フルオレセイン蛍光造影(FA)では過蛍光、ICG蛍光造影(IA)では低蛍光を示します(図下段左と右)。

放射線治療

経過をみていたところ、漿液性網膜剥離が黄斑部に及び図上右)視力が0.1に低下したので、放射線治療を行いました。(3Gyを13回、総量39Gy)
漿液性網膜剥離はほぼ吸収(図下右)して左眼視力は0.7まで改善しましたが、自覚的には視野の暗さは残り、改善が実感されないといいます。
図左に示す眼底自発蛍光像低蛍光を示す網膜色素上皮委縮が中心窩付近まで進行したためと考えられます。