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斜位近視のメカニズム

間欠性外斜視https://meisha.info/archives/910の中には外斜位時に近視度数がアップして遠見両眼視力が低下するケースがあり、斜位近視https://meisha.info/archives/5172と呼ばれます。
また一部の中等度~高度遠視の幼小児は調節性内斜視https://meisha.info/archives/5142を発症します。
両者に共通する機序は調節と輻湊が連動する近見反応https://meisha.info/archives/5142です。
しかし間欠性外斜視のうちの一部にだけ斜位近視がみられるのはどうしてでしょうか?

調節と輻湊の制御モデル

調節と輻湊を制御する工学モデルとして知られるSchorモデルwww.jstage.jst.go.jp/article/jorthoptic/48/0/48_048S003/_pdfでは、図に示す初期の急速相]とその後の[緊張相]という2つの制御機構を想定しています。
このうち急速相は刺激に対して短い時定数で反応する高速積分器であり、ゲイン(利得)が小さいため調節ラグや固視ズレを生じます。
一方、緊張相は長い時定数で反応する低速積分器で、フィードバック回路を介して調節ラグや固視ズレを解消するゲインの大きい順応性反応です。

そして斜位近視はこのモデルの緊張相の輻湊の不足で説明できるとされます。
すなわち下段右の緊張相の輻湊が不十分なために像のズレが残り、これを下段左の急速相の輻湊で補おうとします。
すると輻湊性調節 CA: convergence accopmodationが発動して、上段の緊張相の調節が持続する結果、近視化すると説明されています。

なお調節性内斜視も同様に緊張相の調節の不足によって生じると説明されています。
内海隆: 斜位近視の病態と治療. 眼科臨床医報 97:222-4.2003