小児期にみられる内斜視の多くは調節性内斜視で、通常1.5~4歳頃発症します。(まれに1歳未満で発症し乳児調節性内斜視と呼ばれます。)
四宮加容: 調節性内斜視の眼鏡処方 あたらしい眼科 37:911-6.2020
診断にはアトロピン点眼https://meisha.info/archives/5133による調節麻痺下屈折検査が重要で、検出される遠視を完全矯正したメガネを装用することで内斜視が消失または軽減します(図下)。
調節性内斜視患者さんの眼位が遠視の完全矯正で改善することには近見反応が関係しています。
正視の目が無調節のとき図左のように遠方からの平行光線は中心窩に集光します。
この目が近方視するときは図右のように毛様体筋の緊張により水晶体の厚みが増して近方からの開散光線が中心窩に集光して(調節)、同時に両眼の内直筋が収縮して両眼の視線が内側に向きます(輻湊)。
さらに瞳孔括約筋の収縮による瞳孔径の縮小で、球面収差、色収差を減少し焦点深度が深くなって像の鮮明度が増します(縮瞳)。
近方視でのこれら輻湊、調節、縮瞳の3つは大脳レベルでの制御により連動して起こる反応で近見反応と呼ばれます。
浅川賢: 近見反応 測定装置と方法. 眼科 61:253-9.2019
遠視眼は調節なしでは平行光線が網膜後方で集光するため網膜像がぼやけます(図左)。
そのため水晶体の厚みを増す調節が働きます(図左から2番目)。
調節性内斜視ではこのとき調節に伴う輻湊のため、内直筋の収縮で両眼が内側に向く内斜視となります(図左から3番目)。
しかし完全矯正メガネを装用すれば調節が不要となり連動する輻湊が働かないので眼位は正位になります(図右)。