CMV網膜炎https://meisha.info/archives/5261はかつて[HIV感染の眼合併症]と考えられていましたが、最近では同種造血幹細胞移植や血液腫瘍性疾患など、高度の医原性免疫能低下状態での発症が増えています。
その臨床的特徴は表のごとくです。
細貝真弓: サイトメガロウイルス感染と眼疾患. 眼科 59:37-46.2017
表の1. と2. は従来のCMV網膜炎の3主要病型、すなわち周辺部顆粒型(緩徐進行型)、後極部血管炎型(劇症型)、樹氷状血管炎型(日本ではまれ)に対応するものです。
(下図の右欄は後極部血管炎型ですが血管炎の所見は欠いています。)
CMVは単球など血球系細胞に潜伏感染しますが、2. の網膜血管炎はウィルスが血管内皮細胞にも親和性が高いことが関わっています。
八幡信代: サイトメガロウイルス網膜炎の新しい病態. 眼科 65:169-73.2023
表の3. は高度の免疫能低下で生体の防御反応である炎症が生じにくい結果で、そのおかげで1.と2.の眼底変化は良好に観察できます。
4. はウィルスによる網膜神経細胞の破壊が炎症をあまり伴わずに進行するようすを示すものです。
上図の右欄下のOCTで示されています。
このような高度免疫能低下宿主に発症する古典的CMV網膜炎に対して、軽度~中等度の免疫抑制状態のケースに発症するCMV網膜炎が慢性網膜壊死CRNとして注目されてきています。
永田健児: サイトメガロウイルスによる慢性網膜壊死. 眼科手術 35:406-8.2022
その特徴は表のごとくです。
表のうち1. と3. はHSVやVZV感染による急性網膜壊死ARN https://meisha.info/archives/2799でもみられる所見です。
ただし経過がARNよりも緩徐であることから慢性網膜壊死CRNと呼ばれるようになってきています。
図はCD4リンパ球数が正常の87歳男性にみられたCRNの初診時左眼所見で、矯正視力は0.8でした。
この後硝子体出血で視力0.02となり硝子体手術とPRPが必要になりました。