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急性網膜壊死 ARN

角膜裏面の大小の白色付着物、すなわち豚脂様角膜後面沈着物 KPが見られ、前房内に炎症細胞(セル)が観察されれば、肉芽腫性ぶどう膜炎と診断されます。
さらに炎症細胞による硝子体混濁を伴い、眼底周辺部に白色滲出性変化が見られると、急性網膜壊死ARN: acute retinal necrosisを疑います。

急性網膜壊死ARN

ARNは水痘・帯状疱疹ウィルス VZVまたは単純ヘルペスウィルス HSVによる感染性ぶどう膜炎です。
眼底の白色病変部位ではウィルスが増殖して網膜の壊死が進行して、その結果、網膜の神経細胞が死滅します。
その変化は円周方向に拡大しますが、徐々に黄斑部にせまってきます。
網膜神経細胞の壊死で周辺視野は失われますが、それよりも怖いのは、壊死網膜に多発裂孔ができて、難治性の裂孔原性網膜剝離で失明することです。
大野重昭 他. 【ぶどう膜炎診療ガイドライン】. 日本眼科学会雑誌. 2019;123(6):635-96.

臨床的対応

失明を回避するため早期に診断して治療を開始する必要があります。
治療の主体は眼球内でのウィルス増殖を抑える抗ウィルス薬の全身または硝子体内投与です。
類似する病態としてサイトメガロウィルス CMV網膜炎眼トキソプラズマ症がありますが、薬物治療が異なるので、原因微生物の確認が重要です。
高瀬博. 急性網膜壊死. 臨床眼科. 2021;75(1):47-52.

前房水PCR検査

ARNの確定診断のためには特徴的な臨床所見に加えて、眼内でのVZVまたはHSVの増殖をPCR法で確認します。
消毒の上、27G程度の針で前房水を採取して、感染性ぶどう膜炎に関係する多種類の病原体DNA断片を検出できるマルチスクリーニング検査を依頼すれば、2日程度で結果が得られます。