若年者の黄斑ジストロフィとして有名なBest病は卵黄状黄斑ジストロフィ(VMD: vitelliform macular dystrophy)とも呼ばれます。
卵黄様の病変はOCTにて網膜下で高反射を示し、眼底自発蛍光(FAF: fundus autofluorescence)では過蛍光を示すことが特徴です。https://meisha.info/archives/1357
同様の網膜下の黄色病変は最近では卵黄状病変(VLs: Vitelliform lesions)と呼ばれ、遺伝性以外でも種々の病態でみられます。
Tさんは左眼のゆがみに数年前から気付いていました。
近医を受診して左眼の加齢黄斑変性の疑いで大学病院眼科を紹介されました。
矯正視力は0.8/0.5で右眼眼底は異常なく、左眼の中心窩には1/4乳頭径大の黄色病変(図左)がみられ、眼底自発蛍光では著明な過蛍光(図中央)を示しました。
OCTでは網膜下の高反射を示しますが(図右)、網膜下液や浮腫など滲出性変化は伴っていないので、無治療で半年ごとの経過観察としました。
70歳時に撮影したスペクトラリスOCTでは、貯留物が視細胞内節を示すEZとRPE(網膜色素上皮)の間の貯留物であることがよくわかります(図左)。
5年後にはこの構造はくずれて吸収され、EZの断裂と外顆粒層(視細胞核の層)の菲薄化をきたしましたが(図右)、矯正視力は0.4と著変ありませんでした。
このようなケースはこれまで成人発症型卵黄状黄斑ジストロフィと呼ばれてきましたが、多くは遺伝子の異常を伴いません。
近藤峰生ほか: 黄斑ジストロフィの診療ガイドライン. 日本眼科学会雑誌 123:424-42.2019
そのため最近では後天性卵黄状病変acquired vitelliform lesion: AVLと呼ばれる傾向にあります。
上野真治: 成人型Best病について教えて下さい. Retina Medicine 5:196-7.2016