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CRVO/BRVO の陳旧期黄斑浮腫治療

網膜静脈閉塞症(CRVO、BRVO)急性期に視力が低下する最大の原因は黄斑浮腫です。https://meisha.info/archives/561
2005年頃までの治療法は薬物治療、レーザー光凝固、手術などさまざまでしたがhttps://meisha.info/archives/5193、2024年現在、抗VEGF薬硝子体注射によってはるかに高い治療効果と患者満足度が得られます。https://meisha.info/archives/552
しかし発症後数年経過してみられる陳旧期の再発黄斑浮腫に対しても硝子体注射を勧めるべきかどうかは悩ましい問題です。

症例:Kさん、80歳、女性 

Kさんは正常眼圧緑内障NTG https://meisha.info/archives/812でA眼科にかかっていました。
2年前にCRVO黄斑浮腫を右眼に発症して抗VEGF薬であるルセンティスの硝子体注射を受け、黄斑浮腫は一旦吸収しましたが再発したので、セカンドオピニオン目的でB眼科を受診しました。
B眼科からC総合病院を紹介され、その後繰り返し再発する黄斑浮腫に対して抗VEGF薬のアイリーアの硝子体注射を2年間で合計5回受けました。
注射のたびに黄斑浮腫は軽快しますが矯正視力は0.5-0.6程度で、自覚的な見え方もあまり変化がありません。
通院治療の負担が重いことを訴えたところ、担当医は自宅から通いやすいA眼科での注射継続を勧めましたが、Kさん自身の判断でA眼科あての紹介状をもって大学病院眼科を受診しました。

大学病院受診時:CRVO発症後2年

右眼眼底は軽度の静脈蛇行のみですでにCRVOの出血はみられず(図左)、OCTにて中心窩網膜厚600µm程度のそれほど強くない黄斑浮腫がみられ(図中央)、矯正視力は0.4/1.0でした。
キサラタン点眼を続行中の眼圧は11/14mmHgで紹介元での視野結果(図右)は上方に絶対暗点のある緑内障視野欠損を示していました。

1. これまでの経過から抗VEGF薬注射を繰り返して他覚的に黄斑浮腫が軽快しても、視力など自覚的な視機能の改善は期待できないこと、
2. 治療しなくても黄斑浮腫で失明することはないこと、
3. 一方NTGは適切に管理しなければ失明するリスクがあること
以上を説明して、抗VEGF薬注射は勧めず、今後は最初にかかっていたA眼科でNTGを中心に診てもらうことを勧めました。
後日A眼科から、硝子体注射は行わずNTGのフォロー中心にみていく旨連絡がありました。