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眼底出血と硝子体注射

眼底出血の2大原因は糖尿病網膜症網膜静脈閉塞症です。
今まで目の病気を患ったことのない中高年の人で、急に片目がぼやけて見えにくくなり眼底出血と言われる場合の多くは網膜静脈閉塞症です。
BRVO(網膜静脈分枝閉塞症)やCRVO(網膜中心静脈閉塞症)など英語の略語で呼ばれることもあります。

血管が詰まり血液が溢れて出血する網膜静脈閉塞症

眼底出血]というと、多くの患者さんは血管の壁が破れて出血すると思っていますが、網膜静脈閉塞症でみられる出血は、実は血管が詰まる(血栓症)ためです。
血液が固まってできる血栓が静脈の内腔を塞ぐと、行き場のなくなった血液が血管の外に溢れます。
これが眼底出血として観察されます。


図は静脈Aに合流する静脈Bが動脈との交差部矢印)にできた血栓(この写真では見えません)によって詰まった網膜静脈閉塞症です。
詰まった部位よりも上流の静脈Bから溢れた赤血球が周囲に拡がって赤く見えています。

網膜静脈閉塞症で視力が低下する理由

幸い網膜静脈閉塞症による眼底出血は視力に関係する中心窩を覆うことはあまりありません。
ただしOCTという網膜の断面をみる検査で詳しく調べると、中心窩の網膜の下に少量の出血がみられることは珍しくありません。
Muraoka, Y., et al. (2015). “Foveal Damage Due to Subfoveal Hemorrhage Associated with Branch Retinal Vein Occlusion.” PLoS One 10(12): e0144894.
しかし、その場合でも光を感じる視細胞の下にある出血が網膜に届く光を遮って見えにくくなるわけではありません。
網膜静脈閉塞症で見えにくくなるのは、実は出血のためではなく黄斑浮腫のためです。
中心窩を通る垂直方向のOCT断面で観察すると、血管から漏れ出た血液中の血漿による浮腫液が、中心窩を含む黄斑に溜まっているのがわかります。

黄斑浮腫に対する硝子体注射

黄斑浮腫による視力低下は可逆性のことが多く、血管からの漏れの原因となるVEGFという物質を減らす抗VEGF薬を注射すると、浮腫が吸収して視力が回復します。
ただし網膜に直接作用させるために、眼球の壁に直接注射針を刺して行う硝子体注射が必要です。