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眼底出血と硝子体注射

眼底出血の2大原因は糖尿病網膜症網膜静脈閉塞症です。
今まで目の病気を患ったことのない中高年の人で、急に片目がぼやけて見えにくくなり眼底出血と言われる場合の多くは網膜静脈閉塞症 (RVO: Retinal vein occlusion)です。
BRVO(Branch RVO: 網膜静脈分枝閉塞症)やCRVO(Central RVO: 網膜中心静脈閉塞症)など英語の略語で呼ばれることもあります。

血管が詰まり血液が溢れて出血する網膜静脈閉塞症

眼底出血]というと、多くの患者さんは血管の壁が破れて出血すると思っていますが、網膜静脈閉塞症でみられる出血は、実は血液が固まってできる血栓によって血管が詰まることが原因です。
血栓が静脈の内腔を塞ぐため行き場のなくなった赤血球が血管の外に溢れて、赤い出血として観察されます。


図は静脈Aに合流する静脈B(点線で示される)が動脈との交差部矢印)にできた血栓(この写真では見えません)で閉塞したBRVOです。
閉塞部位よりも上流の静脈Bから溢れた赤血球が周囲に拡がって赤く見えています。

網膜静脈閉塞症で視力が低下する理由

BRVOでは幸い血管から溢れ出た赤血球が視力に関係する中心窩を覆うことはあまりありません。
BRVOで見えにくくなるのは、実は赤血球とともに溢れ出た液体(血漿)によって黄斑部にむくみを生じる黄斑浮腫のためです。
図のように中心窩を通る垂直方向のOCT断面で観察すると、血管から漏れ出た血液中の血漿成分に由来する浮腫液が、中心窩を含む黄斑に溜まっているのがわかります。

黄斑浮腫に対する硝子体注射

黄斑浮腫による視力低下は可逆性のことが多く、血管からの漏れの原因となるVEGFという物質を減らす抗VEGF薬を注射すると、浮腫が吸収して視力が回復します。
ただし網膜に直接作用させるために、眼球の壁に直接注射針を刺して行う硝子体注射が必要です。