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虚血型 CRVO の NVG 発症時期

隅角の新生血管が原因で周辺虹彩前癒着を生じ眼圧が上昇する血管新生緑内障 NVG: neovascular glaucomaは続発閉塞隅角緑内障https://meisha.info/archives/4800の難治な1病型です。
その原因のうち虚血型 CRVOhttps://meisha.info/archives/5205 では、抗VEGF薬が登場する2005年以前は、虹彩や隅角に新生血管を生じるのはCRVO発生から半年以内のことが普通でした。
The Central Vein Occlusion Study Group N report. Ophthalmology 102:1434-44.1995

抗VEGF薬時代のNVG発症時期

しかしCRVOの早期合併症である黄斑浮腫とその再発に対して抗VEGF薬の硝子体注射https://meisha.info/archives/552が繰り返し行われる現在、以前よりはるかに遅れてNVGが発症するようになりました。
抗VEGF薬は黄斑浮腫の抑制以外に虹彩と隅角での血管新生も抑制するからです。
しかしその効果は一時的でNVGの根本治療とはならないため、以前は半年程度で発症したNVGが数年後忘れた頃に発症することは珍しくありません。
Brown DM et al.: Ranibizumab in preproliferative (ischemic) central retinal vein occlusion: the rubeosis anti-VEGF (RAVE) trial. Retina 34:1728-35.2014

症例:80歳女性

1か月前からの右眼のかすみで近医にかかったYさんはCRVOに伴う黄斑浮腫として大学病院眼科を紹介されました。
矯正視力は0.2/1.2、眼圧は14/10mmHg、両眼IOL眼で右の眼底全体に網膜出血が散在し(図左)OCTにて黄斑浮腫が確認され(図右)抗VEGF薬(アフリベルセプト)の硝子体注射を受けました。

1か月後黄斑浮腫は消失し自覚的な見え方は改善しましたが、視力は0.3どまりでした。
視力回復が不十分なのは視細胞障害(OCTでの中心窩EZの障害)のためとされました。https://meisha.info/archives/571
その後2年間、黄斑浮腫が再発する度に合計6回の抗VEGF薬注射が繰り返されましたがその間、蛍光眼底造影検査FAは施行されていません。

2年後のNVG

初診から2年後、右眼の眼痛を主訴に受診し、右視力は手動弁、眼圧は40mmHg虹彩面上と隅角に新生血管を認めました。
NVGと診断されて汎網膜レーザー光凝固術 PRP: panretinal photocoagulationを受け、眼圧下降目的で毛様体凝固術 CPC: cyclophotocoagulationが施行されました。
振り返ってみると初診後5カ月での黄斑浮腫再発時に、注射による浮腫消失後も0.02の視力が改善しなかった時点で、すでに虚血型CRVOに発展していたのではないかと推測されます。
その際にFAを施行してPRPを行っていればCPCまでしなくて済んだかもしれません。