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黄斑浮腫と視力

眼底出血の代表の網膜静脈閉塞症は、出血ではなく黄斑浮腫のために視力が低下することを前回説明しました。https://meisha.info/archives/552
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)では、図上段の右のOCT像に示す黄斑浮腫がみられると矯正視力は低下します(この例では0.3)。
しかし下段の目では網膜出血はみられるものの黄斑浮腫がないので矯正視力は1.0と正常です。

黄斑浮腫の程度

視力に影響する黄斑浮腫の程度は、中心窩での網膜の厚みである中心窩網膜厚で評価します。
しかし黄斑浮腫のために中心窩陥凹が消失すると、中心窩の位置がわからなくなります。
その場合は垂直断面のOCT画像で、網膜最内層の高反射を示す神経線維層(NFL: nerve fiber layer)をまず確認します。
上下のNFLが途切れる断端(図の下向き矢印)の中点で、網膜色素上皮(RPE)からの垂直距離をOCTのキャリパーで測定します。

中心窩網膜厚と矯正視力

抗VEGF薬の硝子体注射で治療中の網膜静脈閉塞症眼で記録した中心窩網膜厚と矯正視力の経過では、 赤線 の黄斑浮腫の減少に同期して青線の矯正視力はアップします。
図の左縦軸LogMARの矯正視力なので一番上の0が少数視力の1.0で下方の1が少数視力0.1です。
▼で示すIVBアバスチン(ルセンティス以前に使用していた抗VEGF薬)の硝子体注射です。

中心窩網膜厚と視力の乖離

上のグラフの5回目のIVBまでは中心窩網膜厚と矯正視力は同期していますが、6回目の注射ではそうではありません。
これは時間の経過によって 浮腫液の組成が変化 した黄斑肥厚では視力悪化効果が小さくなるためと考えられます。
また症例によっては初回注射から、中心窩網膜厚が減少しても視力が改善しない例も存在します。
そのような黄斑浮腫の改善が視力につながらない理由として、視細胞障害や網膜内層虚血などがあります。
飯島裕幸: 網膜静脈閉塞症の視力低下機序. 眼科 63: 227-233, 2021.
Iijima H: Mechanisms of vision loss in eyes with macular edema associated with retinal vein occlusion. Jpn J Ophthalmol, 2018.