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斜位近視

間欠性外斜視

両眼開放時に両目の視線が目標に向かう状態(外斜位)と、片目の視線が外に外れる状態(外斜視)のいずれもがみられる場合、間欠性外斜視https://meisha.info/archives/2410と診断されます。
間欠性外斜視の安静時の眼位は、図右のように両眼の視線が開散した状態です。
一方遠方の目標で両眼の視線が合う図左の外斜位は、両目の内直筋を収縮させて輻湊している状態です。

斜位近視

間欠性外斜視で上図左外斜位時に[遠くの視標がぼやける]と訴える場合は斜位近視と呼ばれ、輻湊と調節が連動する近見反応https://meisha.info/archives/5142が原因です。
遠方視であっても輻湊に伴う調節によって水晶体の厚みが増してみかけ上の近視化を生じるためです。
内海隆: 斜位近視の病態と治療. 眼科臨床医報 97:222-4.2003
なお斜位近視の英訳としてしばしば使用されるphoria myopiaは和製英語で、海外ではpseudomyopia in (intermittent) exodeviationとされます。

症例:17歳男子

10歳くらいから間欠性外斜視として近くの眼科で経過観察されていました。
14歳頃から集中すると近視のめがねをかけていても遠くがぼやけるようになりました。
17歳の今回、コンタクトレンズ(CL)診療所にて斜位近視を疑われ、斜視を治さないとCLを処方できないといわれて大学病院眼科を紹介されました。
両眼とも軽度~中等度の近視性乱視でした。
RV: 0.08 (1.2 X -3.25D : Cyl -1.0 Ax 180)
LV: 0.1 (1.2 X -2.25D : Cyl -1.5 Ax 180)
片眼ずつの検査では矯正視力はそれぞれ1.2ですが、上記レンズでの両眼視力は0.15と著しく不良です。
当初、遠見で50△base inの外斜と判断されたので、これを矯正する20△base inと30△base inのプリズムhttps://meisha.info/archives/922を試験眼鏡枠に追加したところ、両眼矯正視力は1.0とアップしました。
その後、プリズムアダプテーションテスト(PAT)を行い、30△base inにて複視もなく近視度数の増強もないことを確認し、両外直筋後転https://meisha.info/archives/1367各7mmを施行しました。
術後遠見眼位は4△base inと良好で近視矯正メガネでの両眼視力も1.2と良好になりした。