パジェットPaget病は、皮膚/粘膜に隣接する臓器由来の癌細胞が、皮膚や粘膜の上皮内を移動して表皮内癌の所見を示す状態で、乳房Paget病と外陰部/肛門などにみられる乳房外Paget病があります。http://www.jsco-cpg.jp/guideline/21_4.html
眼瞼縁に開口するマイボーム腺の癌である脂腺癌https://meisha.info/archives/691でも、pagetoid spreadと呼ばれる上皮内浸潤を示すことがあり、慢性の眼瞼炎や眼瞼結膜炎に誤診されて癌の発見が遅れます。
林暢紹: 脂腺癌. In: 大島浩一 & 後藤浩 (Eds): 知っておきたい眼腫瘍診療(眼科臨床エキスパート). 医学書院, 東京, 233-236, 2015.
1年半前から、右下まぶたの痛みとただれがあり、最初の半年間はA眼科で点眼と軟膏治療を受けていました。
しかし改善なく、B眼科にうつり点眼薬や軟膏を変えて経過観察されました。
図は1年間通ったB眼科での経過中の前眼部写真です。
B眼科の医師は進行性の悪化から、腫瘍の可能性を疑って大学病院眼科に紹介しました。
右下まぶたの内側1/3は粗造で睫毛が脱落、隣接する眼瞼結膜は充血肥厚していましたが、眼瞼内に明らかな腫瘤は触れません。
外来のベッドで局麻下に睫毛が脱落した下まぶたの病巣中央を楔型に切除して病理検査に提出しました。
その結果、眼瞼皮膚の重層扁平上皮内に、核形不整で淡明な細胞質を有する脂腺癌と考えられる癌細胞が見られると報告を受けました。
眼瞼結膜面に広がる癌細胞をターゲットとして、0.04%のマイトマイシンC 点眼1週、休薬1週の治療を3クール行ないましたが、その後の眼瞼結膜面でのmapping biopsy(図)で腫瘍陽性の結果でした。
国立がん研究センター中央病院、皮膚腫瘍科に紹介され、下眼瞼の病巣切除+耳介軟骨移植による眼瞼再検術を受け、深部、側方ともに断端陰性の結果で、以後経過観察中です。