霰粒腫と診断されて再発を繰り返す場合、マイボーム腺嚢胞のことがあることを以前解説しました。
https://meisha.info/archives/638
再発をする霰粒腫の鑑別診断でもうひとつの重要な病気が脂腺癌です。
まぶたに発生する脂腺癌の多くは、眼瞼後葉の瞼板内で油を分泌するマイボーム腺由来なのでマイボーム腺癌とも呼ばれます。
ただし、睫毛の毛包内に開口するツァイスZeis腺由来の脂腺癌も少数ながら存在するとされます。
92歳の男性が眼科診療所で、霰粒腫と診断され切除手術を受けましたが、摘出した組織の病理検査が脂腺癌で断端陽性、つまり[癌の全体は取り切れていません]との報告を受けたので大学病院に紹介されました。
左の上下が前医での手術前の写真です。
脂腺癌では癌細胞の内部に油滴が蓄えられているため、下まぶたの裏から見ると結膜面が黄色く見えます。
右の前医での術後の写真でもこの黄色い部分が残っているのがわかります。
黄色が目立たない脂腺癌ももちろんあります。
霰粒腫ではなく脂腺癌を疑う根拠として重要な点のひとつに睫毛(まつ毛)の脱落があります。
真皮内に存在するまつ毛の元になる細胞(毛母細胞)が癌細胞の浸潤で障害されるためです。
まぶたの良性腫瘍で多い眼瞼母斑や脂漏性角化症では、まつ毛ができものの表面から生えていますが、脂腺癌ではまつ毛が抜けています。