びまん型の霰粒腫や限局型であっても大きい霰粒腫では、原因となった油脂を掻き出す手術を行います(霰粒腫摘出術)。
https://meisha.info/archives/627
その場合手術後、同じ場所からの再発はあまりありません。
しかし霰粒腫の手術を受けたのに何度も再発を繰り返すとして、大学病院の眼科に紹介されてくる患者さんがいます。
その原因のひとつは悪性腫瘍のマイボーム腺癌https://meisha.info/archives/691ですが、もうひとつはマイボーム腺嚢胞(マ嚢胞)という病気です。
上下の眼瞼の瞼板内には油脂を分泌する脂腺(マイボーム腺)があります。https://meisha.info/archives/703
マイボーム腺嚢胞はその脂の出口である導管が壁になった袋(嚢胞)です。
吉川洋. 霰粒腫と瞼板内角質嚢胞(マイボーム腺嚢胞). In: 大島浩一, 後藤浩, eds. 知っておきたい眼腫瘍診療(眼科臨床エキスパート). 東京: 医学書院.204-10. 2015
袋の内面を覆う細胞は重層扁平上皮で、皮膚の表皮細胞と同様に角化して角質として剥がれて垢になるので、英語ではIntratarsal keratinous cyst(瞼板内角質嚢胞)と呼ばれます。
霰粒腫の摘出術で皮膚または眼瞼結膜を切開すると出てくるのは油ですが、マイボーム腺嚢胞を切開して出てくるのは堆積した角質の成れの果ての垢です。
霰粒腫では異物肉芽腫性の炎症の原因となる油をきれいに掻き出せば治癒します。
しかしマイボーム腺嚢胞では内容物を残らず除去しても、嚢胞壁が残れば上皮細胞が分裂増殖して再び角質(垢)を貯め込むので必ず再発します。
再発させないためには嚢胞の壁を含めてすべて取り除く必要があります。
手術で皮膚を切開すると白色のドーム状の嚢胞の壁が見えてきます。
嚢胞壁は瞼板につながっているので、瞼板組織を一部けずって残さず嚢胞を全摘するか、あるいは残存する嚢胞壁の内面をジアテルミーなどで焼灼して生きた上皮細胞を殺す必要があります。