• 眼科通院中の患者さんや眼科医向けの役立ち情報

複視患者のMRI依頼

複視の原因の一部は脳の病気

複視は視線のズレのために左右の目に映る像が水平、垂直あるいは斜めにだぶる症状です。https://meisha.info/archives/8
二つに分かれて見えるだけでなく、隣のものが重なって見えて(混乱視)とても不快です。

複視は眼球運動が正常な小児の共同性斜視の患者さんが訴えることはあまりありません。
一方、眼球運動に関わる脳神経(3,4,6番)の麻痺やさらに高位の脳の障害で片目の眼球運動が障害されて起こる非共同性斜視の成人患者さんの多くは複視を主訴に眼科を受診します。
その原因となる脳腫瘍や脳梗塞、脳動脈瘤の有無をみるために、診療所の眼科医が近隣の脳外科病院に脳のMRI撮影を依頼することがあります。
MRIで脳の異常が発見できなければ原因不明の眼球運動障害として大学病院の眼科に紹介されます。

甲状腺眼症による複視

その原因として、重症筋無力症(MG)やフィッシャー症候群など神経内科領域の病気もありますが、多いのは甲状腺眼症です。
甲状腺眼症は甲状腺関連の自己抗体(TRAbやTSAbなど)が陽性になる眼窩の炎症で、肥厚した外眼筋が伸びなくなって眼球運動が左右非対称に障害されることで複視を生じます。
ユーサイロイドと呼ばれる甲状腺ホルモンが正常な甲状腺眼症も少なくありません。
脳のMRI検査では通常、水平断面の画像のみが報告され、眼窩腫瘍ならそのようなMRI画像でも診断できますが、甲状腺眼症でよく見られる下直筋の肥大は、顔の前後軸に垂直な冠状断面でないとよくわかりません。

眼窩3方向と脂肪抑制T2強調

甲状腺眼症を調べる際には眼窩3方向(水平断、冠状断、矢状断)の画像と、外眼筋の炎症による浮腫の所見がわかる[脂肪抑制T2強調画像]が必要です。
大学病院で再度のMRI撮影を行う無駄を省くために、最初に診た眼科医が脳外科病院にMRI検査を依頼する際には、
[複視の原因になる脳の病変をMRI検査で調べてください]
と依頼するのではなく
[脳および眼窩内病変を調べてください]
あるいはさらに詳しく
[脂肪抑制T2強調の眼窩3方向像を含めた頭蓋内の撮像をお願いします]
と依頼すべきです。

  • 左上:上下複視を訴える患者さんの上方視時、右眼の上転制限がみられる。
  • 左下:眼窩冠状断、脂肪抑制T2強調のMRI画像。右眼(向かって左)の下直筋の断面が肥大して、かつ白く高信号を示し、炎症性肥大を示している。
  • 右上:右眼の矢状断。下直筋の筋腹が肥大して高信号を示している。
  • 右下:水平断の画像だけでは眼窩内炎症が捉えられず、甲状腺眼症による複視であることが見落とされる。