[目にゴミが入った]と訴えて眼科にかかる患者さんがいます。
入ったゴミ(異物)の部位によって結膜異物、角膜異物、眼内異物と呼ばれ、この順で重症になります。
多いのは庭木の作業や屋外レジャー中に、植物の一部や虫がまぶたの間から結膜嚢内に入り込むケースです。
結膜嚢を観察するために、上まぶたを翻転(図上)、あるいは下まぶたを引き下げて(図下)、入った異物をピンセットでつまみ出します。
フルオレセインNa染色による点状表層角膜症(SPK)観察https://meisha.info/archives/608の要領で青色光で観察すると、髪の毛などの微細な異物もみつかりやすくなります。
よくあるエピソードは、金属加工の作業中に機械あるいは工作物の鉄の破片がはねて、角膜表面にささるケースです。
受傷して数日経過すると、図のように鉄片がさびて黒くなり、まわりの角膜実質内に広がったさびによる炎症で、球結膜の充血と角膜血管新生を生じます。
鉄片を取り除くだけでなく、周囲の角膜内のさびを削り取る必要があります。
患者さんは通常[草刈り作業中に石の破片が飛び込んだ]と訴えますが、眼球内に飛入するのは、石ではなく欠けた電動草刈り機の刃の破片(鉄)です。
角膜あるいは強膜を貫通して眼球内に飛び込むには、破片の比重が大きい必要があるからです。
眼球内の細菌感染のリスク以外に、イオン化した鉄の網膜毒性で長期経過後に眼球鉄症を生じます。
頭部CT検査で眼球内の鉄片を図のように確認できれば、硝子体手術などで摘出します。
MRI検査は強力な磁場内での鉄の移動で、眼球内の構造をさらに障害するので禁忌です。