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飛蚊症と散瞳眼底検査

青空などを背景にしてゴミのようなものが図のように動いて見える症状は飛蚊症 floaters と呼ばれ、眼科を受診する患者さんによくある症状です。
原因を明らかにするには散瞳薬を点眼しての眼底検査が必要で、検査後数時間まぶしさが続きます。
多くの場合は後部硝子体剥離生理的飛蚊症で失明の心配はありません。
しかし場合によっては、放置すれば失明に至る網膜剥離やその予兆である網膜裂孔による飛蚊症のことがあります。
前者では手術が必要ですし、後者では網膜剥離を予防するためにレーザー光凝固治療https://meisha.info/archives/856が必要です。
飛蚊症とは何でしょうか?

硝子体中を浮遊する混濁

飛蚊症は網膜近くの硝子体中に浮かぶ浮遊性の濁りが、網膜に影を落として見えることが原因です。
のようにリング型とU字型の濁りが硝子体中に浮かんでいると、点線のように眼球外から入ってきた光によって、その影が網膜上にできます。
硝子体の動きに合わせて影も動くので、揺れて見える飛蚊症として自覚されます。

図は飛蚊症を訴える眼の眼底写真です。
左は網膜にピントを合わせています。
そこから少しずつ手前にピントをずらせて中央、右と撮影しました。
網膜の少し前の硝子体中に浮かぶ不整形の濁りにピントが合うようになりました。

濁りの本体

飛蚊症の原因となる硝子体中の濁りの出所としては次のようなものがあります。
1. 後部硝子体膜、濃縮した硝子体
2. 炎症細胞、出血
3. 網膜裂孔に由来する濁り

若い目の硝子体内部は均質で、硝子体膜と呼ばれる薄膜で包まれています。
加齢によって硝子体が収縮すると、網膜に接していた硝子体膜が網膜から剥がれ後部硝子体剥離と呼ばれます。
その際、視神経乳頭の周囲の硝子体膜はリング状に濁っているので図のようなリング状の飛蚊症になり、ワイス環 (Weiss ring or glial ring) と呼ばれます。

網膜裂孔に由来する飛蚊症

網膜に癒着していた硝子体が剥離する際に、引っ張られた網膜が裂けると網膜裂孔ができて、そこを通って硝子体中に散布される細胞成分が飛蚊症を生じます。
網膜裂孔を放置すると裂孔原性網膜剝離https://meisha.info/archives/856で失明する危険性があります。
網膜裂孔は通常眼底の周辺部にできるので、これを見逃さないために散瞳しての眼底検査が行われるのです。