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傍中心暗点で気づかれた緑内障

自覚症状に乏しい緑内障

緑内障の主たる症状は視野欠損など視野の障害ですが、他眼の視野の健常部分でカバーされると片眼に大きな視野欠損があっても気づきにくく、無症状の緑内障患者さんは少なくありません。
ただし10度以内の中心視野内に生じる傍中心暗点は周辺視野の異常に比べて自覚されやすく、射撃などで片目をつぶって集中した際に気づくことができます。

症例:66歳男性

クレー射撃が趣味のOさんは左目をつぶって右目で目標をねらいます。
硬膜下血腫で入院したため数カ月間、射撃を中断していました。
最近になって再開したところ、左方向へ飛んでいく標的の皿が一瞬視界から消えることに気づくようになりました。

同じころ人間ドックの眼底カメラで緑内障の疑いといわれ眼科にかかりましたが、視野検査では異常なしといわれました。
しかし心配になり別の病院の眼科にかかったところ、右目の下耳側に狭い神経線維層欠損NFLD: nerve fiber layer defectを指摘されました。

視力は
RV = 0.08 (1.2 x -2.0D cyl -1.75D Ax 80)
LV = 0.07 (1.2 x -1.75D cyl -2.0D Ax 95)
眼圧:13/13mmHg

10-2視野検査

前医で異常なしとされた視野検査は、おそらくハンフリー24-2だったと判断し、傍中心暗点の検出を目的として10-2視野を行いました。https://meisha.info/archives/331
グレイスケール表示でははっきりしませんが、トータル偏差とパターン偏差の確率プロットで、右眼の固視点に接する鼻側上方に明らかな傍中心暗点が検出されました。
この位置は先の眼底写真のNFLDに含まれる黄色星印の網膜部位に対応します。
おそらくこの領域にクレー射撃の皿が入った際に消えたと感じたのでしょう。
正常眼圧緑内障の視野障害がすでに始まっていることを説明しました。