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緑内障の鼻側階段

半盲視野の垂直線を挟む大きな感度差

脳梗塞や脳腫瘍など頭蓋内病変に特徴的な半盲:その特徴は、視野中央の垂直線両サイドの著明な感度差です。
図の右同名半盲では、正常からの感度低下を示すトータル偏差(図の下段)において、中央の垂直線をはさむ両サイド(図の赤四角)で10dB以上の大きな段差になっていることがわかります。

緑内障では上下の感度差

同様の著明な段差が鼻側の上下視野の間にみられる場合は鼻側階段 nasal stepと呼ばれ、緑内障に特徴的です。
半盲は視交叉での半交叉に原因がありましたがhttps://meisha.info/archives/5858、鼻側階段を生じるメカニズムはどうなっているでしょうか。

緑内障、鼻側階段のメカニズム

図左上段は鼻側階段を示す緑内障患者さんの右眼ハンフリー30-2視野です。
グレイスケール表示で上半分が黒い鼻側視野で、中央の水平線を挟む上下の感度差は右のトータル偏差での赤四角に示すように大きな段差になっています。
図左下段は視野に対応する眼底模式図で、中心窩から耳側に延びる水平線(耳側縫線)の下方(斜線部分)が暗点に相当します。

この部位の神経節細胞からの軸索図右の赤い曲線に沿って進み、耳側下方の視神経乳頭の下耳側縁(赤の楕円部)で後方に屈曲して視神経内を進みます。
緑内障では神経線維がこの乳頭縁で障害されますが、青曲線で示す上耳側網膜からの軸索が視神経乳頭に入る上耳側縁(青の楕円部)とは十分に離れているために、鼻側視野での上下の感度差が生じます。