結膜の病気の多くは細菌やウィルス感染、あるいはアレルギーによる結膜炎ですが、まれに悪性腫瘍のことがあります。https://meisha.info/archives/2503
結膜悪性腫瘍は細胞起源によって非上皮系のリンパ腫、メラノーマ(悪性黒色腫)と上皮系腫瘍に分類され、後者は眼表面扁平上皮新生物 OSSN: Ocular surface squamous neoplasiaと呼ばれます。

結膜上皮由来の癌であっても角膜上に広がることがある(図右端)ため、眼表面 ocular surfaceという名称になっています。
OSSNは病理組織学的に角結膜上皮内新生物 CIN: (corneal and) conjunctival intraepithelial neoplasiaと結膜扁平上皮癌 SCC: squamous cell carcinomaに分かれます。

異形細胞が基底膜 BM: basement membrane上の結膜上皮層内にとどまっていればCIN、BMを破って下層の線維血管性の粘膜固有層に浸潤していればSCCと診断されます。

血管を含まない結膜上皮層内にとどまるCINでは転移を生じないので前癌状態とも呼ばれます。
同様の関係は皮膚科領域での表皮内癌(=ボーエンBowen病)と有棘細胞癌(扁平上皮癌)の関係に対応します。
CINはさらに結膜異形成 dysplasiaと上皮内癌 CIS: carcinoma in situに分類されます。
dysplasia → CIS → SCCというのは子宮頸癌進行の考え方をとりいれたものです。
dysplasiaでは細胞核の大小不同や扁平上皮化生などの細胞構造の異常がみられます。
さらにbasal側とapical側という上皮細胞としての極性をも失った細胞が上皮全層を置換していればCISと診断されます。
小幡博人. 結膜上皮内新生物vs結膜扁平上皮癌. In: 石眼科プラクティス 8 いますぐ役立つ眼病理: 文光堂.112-4. 2006