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結膜炎と誤診される癌

結膜炎はポピュラーな目の病気です。https://meisha.info/archives/2498
通常、細菌性は抗菌点眼薬にて数日で、ウィルス性https://meisha.info/archives/2417も1-2週以内に自然によくなります。
アレルギー性結膜炎は抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬https://meisha.info/archives/844で軽快します。
しかし結膜炎と診断され点眼治療でよくならない結膜炎もどきのひとつに結膜腫瘍があります。

結膜炎に誤診される結膜の悪性腫瘍

そのうちpagetoid spread を示す脂腺癌についてはすでに紹介しました。https://meisha.info/archives/2474
同様に慢性結膜炎に間違われる結膜腫瘍として、結膜上皮内癌CIN: conjunctival intraepithelial neoplasiaがあります。

結膜上皮内癌CIN

CINは核胞体比が高く極性を失った異型細胞から成り、結膜上皮層内に留まって粘膜固有層との境界である基底膜を超えません。
高木健一, 田辺美香: 結膜上皮内癌. In: 後藤浩 & 小幡博人 (Eds): 眼病理アトラス(眼疾患アトラスシリーズ4). 総合医学社, 82-83, 2020.

基底膜を超えて浸潤すると結膜扁平上皮癌SCC: squamous cell carcinomaと呼ばれます。
CINと結膜SCCはともに結膜上皮を構成する扁平上皮細胞由来の悪性腫瘍で、両者を併せてOSSN: Ocular surface squamous neoplasiaと呼ばれます。
Lee GA, Hirst LW: Ocular surface squamous neoplasia. Surv Ophthalmol 39: 429-450, 1995.
ただし正常の結膜は重層扁平上皮ではなく重層立方上皮だとのことです。
小幡博人: 結膜. In: 後藤浩 & 小幡博人 (Eds): 眼病理アトラス. 総合医学社, 4-5, 2020.

細隙灯顕微鏡像

CINの典型例は、瞼裂部の角膜輪部にゼラチン様の半透明隆起として見られます。
打ち上げ花火様と形容されるループ状血管を含むこともあります。

田邉美香、他: Ocular surface squamous neoplasiaの34症例. 日本眼科学会雑誌 118: 425-432, 2014.
中澤哲治、他: 山梨大学医学部附属病院における結膜上皮内癌の検討. 眼科 49: 1955-1961, 2007.

治療

病理像の確認のため、腫瘍細胞を結膜下に散布しないよう注意して切除生検します。
転移能は低いものの再発はしやすいため、残存するあるいは生検時に散布した腫瘍細胞をターゲットとして、術中の冷凍凝固や、術後のマイトマイシンC点眼を行うことがあります。