片目または両目が真っ赤に充血して、目が開きづらくなるほどの大量の目ヤニを訴えて受診する患者さんの多くはアデノウイルス感染による流行性角結膜炎EKC: Epidemic keratoconjunctivitisです。
「ハヤリメ」とも呼ばれるように、手に付着する目ヤニによる接触感染で学校や職場で広がります。https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-30.html
現在のところアデノウイルスに対する特効薬はないので、症状が自然に治まるのを待つしかありません。
4日前に目ヤニを伴い左目が充血したので、近くの眼科医院を受診、結膜炎と診断されてフルメトロン(ステロイド)とレボフロキサシン(抗菌薬)の点眼を指示されました。
1日遅れて翌日には右目にも同様の充血がみられ、目ヤニと目の痛みもありました。
点眼していても改善なく、ひどくなる一方なので総合病院眼科を受診しました。
片目ずつ隠して見え方を尋ねましたが視力障害はありません。
図は接触を避けるために本人に下まぶたを引き下げてもらい撮影した写真ですが、両目の眼球結膜とまぶたの裏の眼瞼結膜https://meisha.info/archives/2498が異常に発赤しています。
この状態で患者さんに触れないよう、携帯型の細隙灯顕微鏡で角膜混濁や前房内の炎症がないことを確認しました。
アデノウイルス抗原の存在はアデノチェックと呼ばれる検査で調べることができます。
これは喉の粘膜をこすってインフルエンザのA型/B型を判定するのと同じ原理で、イムノクロマト法https://www.acute-care.jp/ja-jp/learning/course/immunoassay/ria/icと呼ばれます。
ベノキシールで点眼麻酔した後、右目の下の眼瞼結膜を綿棒でこすり、採取したサンプルで検査したところ、10秒後には2本線が出現して陽性と判断されました。
患者さんに不用意に接すると、眼科診療所でEKCを流行らせることになります。
そこで検査に使用した綿棒などは感染性廃棄物として廃棄して、患者さんが触れた部位はルビスタワイプでふきとりました。
ルビスタの成分はペルオキソ一硫酸カリウムで、発生する次亜塩素酸とともに、ウイルスを構成する蛋白を酸化分解します。https://www.rubysta.jp/medical_info/mechanism/
また眼科医自身の手指も流水でよく洗い、者さんへは以下のように説明しました。
「目やにのついたあなたの手でドアノブやテーブルなどをさわると、そこに触れた家族や友人があなたと同じように感染します。目にはふれないようにして、頻回に手洗いをして感染を広げないよう注意ください。」