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眼窩脂肪ヘルニア

61歳の男性が両目の外側の出来物を心配して受診しました。
特に左目の出来物が目立ち、上段の写真で上下のまぶたの間からピンク色のできものがはみ出しています。
下段の細隙灯顕微鏡写真では血管が走る結膜の下の隆起であることがわかります。
患者さん本人は痛くもないが、鏡を見ると気になると言います。

眼窩脂肪ヘルニア(眼窩脂肪脱)

これは眼窩脂肪ヘルニアherniation of orbital fat眼窩脂肪脱: orbital fat prolapse)です。
眼窩脂肪は上下内外の4直筋とその間の筋間膜で形成される筋円錐の内と外に存在します。
4直筋は眼球の後ろ2/3の強膜を覆うテノン嚢を貫いて眼球壁に付着します。
眼窩脂肪ヘルニアは主に上直筋と外直筋の間のテノン嚢の脆弱部を破って筋円錐内の眼窩脂肪が結膜下に脱出する異常です。

CT検査

結膜下の組織が眼窩脂肪であることはCT検査にて観察できます。
写真は上記症例の外直筋よりやや上での水平断面です。
脂肪のCT値(-100)は水(0)よりも小さいので、通常の撮像では黒く映ります。
赤矢印が結膜下の脂肪で、これが緑矢印の筋円錐内の脂肪とつながっているのがわかります。

ヘルニア

臍ヘルニアや鼠径ヘルニアは腹壁の筋層の弱い部分(ヘルニア門)を通って腹膜内の腸などが脱出する状態です。
眼窩脂肪ヘルニアも同様にテノン嚢の弱いヘルニア門を通って眼窩脂肪が脱出しています。
硝子棒で押し込むと脂肪は本来の眼窩内に還納することができます。
図は別症例ですが星印の脱出した眼窩脂肪を硝子棒で還納できた写真です。

治療

視機能に影響はないので放置してもよいですが、異物感を訴える場合や整容的に問題となる程度のものでは手術治療が行われます。
結膜を切開して脱出した脂肪組織をモスキートペアンで挟んで切除し、周囲のテノン嚢のヘルニア門を閉じるように縫合するか、あるいは強膜表面に縫い付ける手術が行われます。
野田実香: 眼形成手術手技 結膜下眼窩脂肪脱. 臨床眼科 60:1570-5.2006
結膜を切開せずに円蓋部付近の結膜を強膜に縫い付けて脂肪の脱出をせき止める新たな障壁を作成する治療法もあります。
Nakamura N et al: Surgical repair of orbital fat prolapse by conjunctival fixation to the sclera. Clin Ophthalmol 9:1741-4.2015