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皮様嚢腫dermoid cyst

まぶたにできる無痛性のしこりの多くは霰粒腫https://meisha.info/archives/627ですが、鑑別すべき病変としてデルモイドシストdermoid cystがあります。
dermoid cystの邦語訳には皮様嚢腫(嚢胞)、類皮嚢腫(嚢胞)、類皮腫などがあります。

症例:14歳男児

5歳の時に右上まぶたの外側が腫れ、霰粒腫と診断されて眼科医院で切開してもらいました。
しかしその後、再発しては自壊することを繰り返していました。
写真は5歳時の腫れたときのものです。

12歳以後、別の眼科医院にてやはり霰粒腫として4回切開されましたが、再発するとして大学病院を紹介されました。
14歳の紹介時にはすでに自壊した内容が一部脱出しています。
後からこの写真を見返しえてみると、白色の練り歯磨き様で霰粒腫の変性した油脂とは異なるようです。

一旦腫れはひいたものの、皮下のしこりが残るために、根治目的で半年後に全身麻酔下での摘出術を行いました。
涙腺部の皮下に周囲に癒着する嚢胞性の腫瘤がみられ、チーズ様の内容物中に多数の毛が含まれていました。
この時点で、霰粒腫ではなく皮様囊腫であることがわかりました。
内容は十分に洗い流し、嚢胞壁をすべて切除して手術を終了しました。
病理診断も皮様嚢腫で、その後再発はありません。

皮様嚢腫の原因

皮様嚢腫の多くは眼窩骨を形成する前頭骨と頬骨の境界に相当する上まぶたの外側にみられます。https://jsprs.or.jp/general/disease/shuyo/hifu_hika/ruihinoshu.html
発生過程で前頭骨と頬骨が癒合する際に,外胚葉組織が引き込まれて生じるためと考えられています。

嚢腫の壁は脂腺や汗腺などの皮膚付属器を伴う表皮で構成され,内腔には角質や皮脂、毛髪が充満しています。
小幡博人: 眼瞼腫瘍の診療の要点. 日本眼科学会雑誌 123:785-804.2019
向野利一郎, 吉川洋: 類皮嚢腫 【見た目が大事!眼腫瘍】. 眼科プラクティス 24:44-5.2008

なお卵巣の皮様囊腫dermoid cyst of ovaryは皮膚構造以外に骨、軟骨、歯などの要素を伴う奇形腫teratomaで皮下の皮様嚢腫とは異なる構造です。