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脈絡膜メラノーマ

メラノーマ(悪性黒色腫)はメラニン色素を作る細胞、メラノサイトの癌化で発症する皮膚の悪性腫瘍です。
白人では人口10万人あたり年間20人以上の発症がありますが、黄色人種である日本人ではその20分の1程度です。
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/melanomaGL2019_web.pdf
皮膚の悪性腫瘍としては基底細胞癌、有棘細胞癌に次いで3番目の多さです。
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/skin_tumor/index.html

ぶどう膜メラノーマ

一方、ぶどう膜と呼ばれる目の中の虹彩、毛様体、脈絡膜メラノサイトが豊富で、これが癌化するとぶどう膜メラノーマを生じます。
皮膚同様、白人に比べて頻度は低く、日本では年間400万人当たり1人の発生で、これは赤ちゃんの目の癌である網膜芽細胞腫https://meisha.info/archives/1265https://meisha.info/archives/1271よりも低い頻度です。

脈絡膜悪性黒色腫(メラノーマ)

ぶどう膜メラノーマのうち脈絡膜メラノーマは通常、眼底に突出する黒褐色の隆起として発見されます。
突出度が大きいために眼底にピントを合わせたのでは腫瘍自体はぼやけてしまい(図左)、フォーカスを手前にして撮影する(図右)必要があります(青い線はアーチファクト)

超音波(図上)やCTあるいはMRI(図下)検査で断面を観察すると、マッシュルームのように突出しています。

これはメラノーマが脈絡膜から網膜下に進出する際、穿破したブルッフ膜によって首を絞められた格好になるためです。
手術で摘出された眼球の病理標本の断面(図)でその様子がわかります。

脈絡膜メラノーマの治療

放置すれば眼球外に転移して命にかかわる危険性の高い脈絡膜メラノーマの治療の原則は、腫瘍が眼球内に留まっている間に眼球を丸ごと取り去る眼球摘出術です。
しかし、片目とは言え眼球がなくなるという精神的ストレスは大きく、近年は眼球摘出以外に重粒子線などの放射線治療、腫瘍の局所切除手術などの選択肢もあります。