赤ちゃんの瞳が暗いところで白く光ることがあり、白色瞳孔と呼ばれます。
白色瞳孔は網膜芽細胞腫(Retinoblastoma、眼科以外の科で網膜芽腫と呼ばれることもある)という乳幼児の網膜の癌の重要なサインです。
赤ちゃんや小児にも、まれですが悪性腫瘍ができることがあり、「小児がん」と呼ばれます。
小児がんは一般に0-14歳にみられる脳腫瘍を含めた悪性腫瘍を指し、1万人に一人程度の頻度で、最も多いのは白血病です。https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/child_aya.html
網膜芽細胞腫は1万5-6千の出生当たり1人の割合で、日本では毎年80人程度の新たな患者さんが報告されます。
東範行: 網膜芽細胞腫全国登録. あたらしい眼科 38: 151-158, 2021.
悪性腫瘍である網膜芽細胞腫は放置すれば脳への浸潤や全身転移で死に至ります。
眼球内に留まっている間に眼球摘出すれば失明しますが生命は守られるので、以前は多くの例で眼球摘出術が行われました。
手術で摘出した眼球を半分に切ると白色の腫瘍であることがわかります。
暗所では瞳孔が広がり(散瞳)、弱い光であっても腫瘍表面で反射した白色の反射光が容易に観察できます。
暗闇で光る猫の目に似ることから英語ではcat’s eye reflexと呼ばれます。
白色瞳孔は網膜芽細胞腫以外にもみられます。
かつて第一次硝子体過形成遺残(PHPV)と呼ばれたPFV(硝子体血管系遺残)https://meisha.info/archives/1239や未熟児網膜症https://meisha.info/archives/903では牽引性網膜剥離に伴ってみられる硝子体中の線維性増殖組織からの反射によって白色瞳孔を示します。
また図のコーツ病では病的に拡張した網膜毛細血管からの大量の黄白色の滲出物が網膜下に貯留し、そのため白色瞳孔になることがあります。